県外での生活費、医療費…心臓移植患者の支援に向けて基金 元市長らが琉大付属病院に支える会発足


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
心臓移植の患者と家族を支える会「芭蕉の会」を立ち上げた安里猛さん(前列中央)と琉球大医学部第二外科の國吉幸男教授(同左)、稲福斉講師(同右)、琉球大医学部付属病院の阿嘉直美看護師(後列左)、渡具知久子看護師長=24日、琉球大医学部付属病院

 心臓移植で患者が負担する多額の費用を支援しようと、琉球大医学部付属病院に心臓移植の患者と家族を支える会「芭蕉の会」が発足した。琉球大医学部第二外科の医師や看護師らが呼び掛け、自身も心臓移植を経験した元宜野湾市長の安里猛さん(67)が会長に就いた。心臓移植手術は沖縄県外の指定病院でしか受けられないため、県内の患者らは手術前後で県外での生活を強いられる。同会は募金を呼び掛けて基金化し、患者の滞在費などを支援する考え。11月にも記者会見を開き、県内外に協力を呼び掛ける。

 会は島しょ県である沖縄の患者の「医療格差」を是正することが最大の目的。末期心不全患者の根治には心臓移植が必要となるが、国内の11指定病院は東京や大阪、福岡などいずれも県外に所在している。患者は適合するドナーが見つかり次第、手術を受けるため、手術前から指定病院近くでの生活が求められる。滞在費や生活費は全て患者の負担で、手術前後の県外での生活期間は、およそ12カ月間に及ぶという。

 医療関連費はほとんどが保険適用だが、県内の患者が例えば東京で心臓移植を受ける場合、(1)手術の担当医師らが来県して説明するインフォームドコンセント(説明と同意)にかかる費用(2)東京までの航空運賃(3)家賃などの滞在費―を合わせ、約250万円プラスでかかる。さらに食費などの生活費も含めると実際に負担する額はさらに膨らむ。

 会設立の中心となった琉球大医学部第二外科の國吉幸男教授は「地続きに指定病院がない沖縄の患者は経済的な負担が大きいことを医療者側も感じていた。基金設立で、県内の患者が心臓移植手術を受ける際に困らないようにしていきたい」と意義を語る。

 会の名称は生命力の強い沖縄の芭蕉をイメージし、安里さんが付けた。心臓移植を受けた安里さんは「多くの人に支えられ、助けてもらった。次に移植を受ける人のためにどうにかしなければならない。私に課せられた大きな課題だ」と語り、幅広い支援を呼び掛けている。
  (池田哲平)