【記者解説】基地負担軽減に逆行 日米合意は形骸化


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 米軍が嘉手納基地と伊江島補助飛行場でパラシュート降下訓練を実施し、伊江島で米兵が民間地に降下した。同訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で伊江島に集約することで合意。2007年には嘉手納基地の使用を「自然状況等の制約」という例外的な場合に限り認めることを日米で追加合意している。

 嘉手納と伊江島で同日に訓練が行われたことはSACO合意が既に有名無実化しており、米軍の裁量次第で場所を問わず訓練ができる実態を表している。嘉手納での実施について米軍は当日の気象海象を根拠にするが、沖縄気象台によると29日午後の伊江島周辺の気候はおおむね晴れ。波、風も比較的穏やかだった。

 嘉手納で兵士を上空へ運んだMC130J特殊作戦機は、同型機が伊江島で部品を脱落させている。国や県、地元市町村が中止を求める中で訓練を強行したのは「基地負担の軽減」というSACO合意本来の趣旨に逆行する。

 一方、伊江島での事故は合意が守られた中で発生した。SACO最終報告に沿った運用でも基地負担の軽減にはつながっていない。伊江島補助飛行場の隣接地区ではフェンス外への米兵や物資の降下が相次ぐ。昨年4月に民家から約50メートルの農地に米兵のパラシュートが降下し、昨年5月には車両投下訓練も行われた。

 29日の降下訓練は、負担を県内でたらい回しするSACO合意では、基地問題が何ら解決しないことを改めて浮き彫りにした。

(塚崎昇平、当銘千絵)