修学旅行生を疑似案内 興南アクト部 喪失感も「魅力伝える」


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首里城の画像を映しながら解説する興南アクト部の生徒=2日、那覇市古島の同校

 興南高校・中学校の生徒で構成する興南アクト部の生徒約20人が2日、首里城を案内する予定だった城南学園中学校(大阪市)の生徒約30人を那覇市古島の同校に招き、スライドショーを使った“バーチャル首里城ガイド”を実施した。アクト部が修学旅行生の首里城ガイドをするようになってから、ことしで8年目。日々、首里城の構造や歴史を学び、ガイドを務めてきた生徒は、共に歩んできた首里城の焼失に喪失感を抱えながらも、笑顔でもてなし、前を向いた。

 首里城が燃えた10月31日の放課後、アクト部はミーティングを開いた。高校2年生の部長、仲村篤紀さん(17)は「現実を受け入れられず、誰も声を発することができなかった」と振り返る。城南学園側から中止の申し入れもあったが、「首里城の魅力を一番知っているのは私たち。なくなったとしても、自分たちの言葉で魅力を伝えたい」と、室内での交流会に替え、引き受けた。

 生徒自身が企画した交流会は、クイズや記念品のストラップ制作も盛り込み、城南学園の生徒を笑顔にした。バーチャルガイドでは、焼失した正殿、北殿、南殿などを映しながら、ペリーの来訪や独特の建築様式などを詳しく教えた。

 「焼失は今回で5回目」と説明したのは、高校2年の副部長、大蔵香澄さん(17)。テレビ中継で燃え崩れる様を見て、心の傷が癒えていない中「30年かけて復元し、ことしに入って完成形になったばかりだった」と、気丈に解説した。

 城南学園中2年の松井絵美さん(14)は「首里城について楽しく教えてくれたことに心を打たれた」と、アクト部の心意気に感謝。ペットボトルのふたを二つ合わせて作った記念品の太鼓型ストラップの中には「首里城が早く復興しますように」と記した紙を入れた。

 部長の仲村さんは「復元された時に今のメンバーは部にいない。次の世代にガイドの仕方をどう教えるのかが課題だ。高校生として何ができるかを考え、前を向きたい」と語った。
 (稲福政俊)