聖域に入らないで 〝神の島〟ルール違反の観光客に苦悩 インスタ目的で立ち入り絶えず 久高島 勝手にプライベートビーチに


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香
ウディ浜に降りる場所に立てられた、立ち入り禁止の看板=10月、南城市の久高島

 【南城】沖縄県内の聖域として知られ、年間約6万人が訪れている南城市の久高島で、立ち入り禁止の御嶽や海に入る観光客が続出し、古来からの歴史や伝統を守り続けてきた島民らが頭を抱えている。インターネットや会員制交流サイト(SNS)には立ち入り禁止区域内で撮影した写真の投稿や、プライベートビーチがあると誤解を招くような投稿が散見される。島内ガイドをしている島民らは「島の特性や文化を正しく理解してから観光や投稿をしてほしい」と訴えている。

 久高島は島全体が聖域とされ、立ち入り禁止の御嶽や遊泳禁止の海がある。イザイホーなどの祭祀(さいし)場があるフボー御嶽は、入り口に「最高の聖域です。何人たりとも出入りを禁じます」と記載した看板が設置されている。しかし出入りする観光客らは後を絶たず、久高島青年団団長の西銘幸太さん(36)は「御嶽の中から出てくる人を何人も注意している。島の人たちがどれだけ大事にしているか十分理解していない」と憤る。

 立ち入り禁止区域への侵入は、フボー御嶽だけではない。島内で海水浴を楽しめるのは港近くのメーギ浜だけだが、写真共有アプリのインスタグラムには、メーギ浜以外で海水浴をする写真が多く投稿されている。ある一定条件を満たせば浜に入れるというような虚偽のルールが書かれている投稿もある。「プライベートビーチ」というコメントも多く、久高区長の西銘忠さん(60)は「そんなのはない。それなのに投稿を見て来る人が後を絶たない」と頭を悩ませる。ウディ浜は数年前に立ち入り禁止の看板と網が張られたが、現在も多くの観光客が訪れている。

 問題はインスタグラムだけではない。インターネットやフェイスブック上では、聖地の力にあやかろうとするツアーがいくつも組まれている。西銘幸太さんは「案内人に島の人が入っていないことがほとんどだ。間違った島の歴史や情報が話されているかも知れず、とても心配だ」と不安を語った。
 (嘉数陽)

久高島の立ち入り禁止区域の御嶽や海で撮影した写真などが投稿されたSNSのイメージ図