ダイナミックな演奏で魅了 沖縄交響楽団定期演奏会


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起伏の激しい演奏を繰り広げたバイオリニストの﨑谷直人(前列中央)

 沖縄交響楽団(沖響、宮城茂光団長)の第63回定期演奏会が4日、沖縄市民会館大ホールであった。今回はチャイコフスキーやバラキレフなど、ロシアの作曲家の作品を中心に披露した。チャイコフスキー「バイオリン協奏曲ニ長調 作品35」ではバイオリニストの﨑谷直人と協演した。﨑谷の起伏の激しい叙情的なバイオリンの音と沖響のダイナミックな演奏が美しく響き、観客を驚かせた。指揮は阪本正彦が務めた。

 バラキレフ「3つのロシアの主題による序曲」で幕は開けた。序盤、バイオリンとビオラ、チェロが心地よく響き、フルートの繊細で優しい音色が輝きを放った。後半に差し掛かると演奏が盛り上がり、広大なロシアの大地を連想させた。

 チャイコフスキー「バイオリン協奏曲―」では﨑谷の修練された間の取り方、感情の入れ方に観客から感嘆の声が上がった。第1楽章ではオーケストラと﨑谷が強弱を効かせながら華やかに演奏し、続く第2楽章では木管楽器の柔和な音色で観客の心を落ち着かせた。その後、﨑谷が硬軟織り交ぜて、厚みのある独奏で悲しみを誘った。第3楽章に入ると、﨑谷が力強くバイオリンを鳴らし、躍動感のある演奏を聴かせた。

チャイコフスキー「交響楽団第6番 ロ短調作品74」を演奏する沖縄交響楽団=4日、沖縄市民会館大ホール

 トリはチャイコフスキー「交響曲第6番 ロ短調作品74」。沖響は別名「悲愴(ひそう)」と呼ばれるこの曲を、抑揚を利かせながらさまざまな感情を音色で引き立てた。第1楽章では奈落の底に突き落とすようなこわごわとした音を響かせる。第2楽章では雰囲気を変えて、愉快なワルツで観客を和ませた。第3楽章ではバイオリンと管楽器が小気味よく鳴らし、会場をにぎやかにした。

 最後の第4楽章は再び悲愴感(ひそうかん)に満ちた旋律を放ち、特にバイオリンの哀愁を帯びた音色は観客の胸を打った。終盤、コントラバスの重低音はさらに悲しみを増長させた。

 このほか、﨑谷が焼失した首里城の再建に向けて、ハイドン「弦楽四重奏 第1番」の第3楽章を沖響と演奏した。﨑谷は「この作品はハイドンが作曲家として歩む第一歩となった曲。美しい首里城の再建に向けて、一歩ずつ歩んでほしい」と思いを寄せた。アンコールはチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」を演奏した。
 (金城実倫)