中学バスケに新潮流 Bリーグユース、街クラブ台頭 レベル向上に期待


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岸本行央監督の指導に耳を傾けるBEASTY CLUBのメンバー=8月、沖縄市の泡瀬公民館

 県内の中学バスケットボール界に新たな潮流が生まれている。クラブチームの台頭だ。18年4月に発足したBリーグ琉球ゴールデンキングスのユースチームであるキングスU15のほか、それぞれの地域を拠点にした「街クラブ」と呼ばれるチームも始動。元プロ選手や専門的に指導法を学んだコーチらが育成に当たり、競技力向上への期待感が高まる。今年8月の沖縄ポッカ杯からは部活動と同じ大会への出場も認められ、試合経験を積む環境も整ってきた。部活動と共存し、相乗効果で沖縄バスケ界のレベルの底上げの起爆剤となるか。 (長嶺真輝)

■“B”の育成改革

 クラブの増加は全国的な流れだ。背景にはBリーグが進める育成改革がある。国内レベルを長期視点で世界水準に近づけるため、18―19シーズンからB1ライセンスにU15ユースチームの保有を義務化。来年3月にはユース、部活動、街クラブがカテゴリの垣根を超えて全国の頂点を競うU15選手権(ジュニアウィンターカップ)のプレ大会を行い、翌年度から定期開催する。

 出場可能な大会が設けられれば、野球やサッカーで競技力向上につながってきたクラブチームがバスケ界でもさらに増える可能性がある。

 県バスケ協会の日越延利専務理事はクラブ化の流れについて「新しい能力が育つかもしれない」と分析する。一方「これまで(選手の育成)を積み上げてきたのは学校なので、部活動の存在を否定してはいけない。今後(各カテゴリを)うまく融合させていくことが重要だ」とバスケ界全体の発展を見据えた。

■選択肢の広がり

キングスの外国人スタッフから英語を習うキングスU15の選手たち=9月、宜野湾市立体育館

 8月にあった沖縄ポッカ杯第17回全沖縄ジュニア大会。今回から部活動以外のクラブも出場可能になり、93チームが出場した男子では個人能力の高い選手が選抜されたキングスU15が優勝し、3位には本島中部が拠点の街クラブ「BEASTY CLUB」が入賞した。ある中学の監督は「同じ中学生だし、子どもの選択肢が広がるのはいいことだ」とクラブの参入を肯定的に捉えていた。

 BEASTY CLUBは昨年12月に発足したU15クラブチームだ。設立者は元プロ選手で、引退後の14年にバスケスクール「ARK」を立ち上げた岸本行央監督(30)。「スクールだけでは長時間を要する練習はできない。時代の替わり目の中で、より普及、育成に力を入れたい」とチームを設立した。

 週に5日、公民館にある体育施設などで練習を積む。岸本監督の人脈を生かしプロ選手らに参加してもらい助言を受けることもある。「お金と時間をかけてもらうからには、それだけのサービスを提供しないといけない。人間力も含め、バスケを通して人材育成に取り組む」と理念を語る。

 1年の途中で部活動からクラブに移った真志喜中2年の真境名隼翔さん(14)は「上の世界で活躍してきた人の助言は心に残るし、週に5日、集中して練習できる。意識の高い選手もいて、刺激になる」と満足げに話した。

 このほか、今年に入ってうるま市を拠点とするinfinity clubも活動を開始している。

■挑戦を後押し

 キングスU15には独特な取り組みもある。今年4月に始めた英語の授業だ。外国人スタッフが講師を務め、毎週実施している。「将来海外でプレーしたい」と目を輝かせるコザ中2年の宜保隼弥さん(14)は「海外選手と意思疎通を図るためには英語が必要」と真剣な表情で机に向かう。

 「留学などの志を持つ選手がスムーズに挑戦できるようにしたい。言語は日常生活にも生きる」と意義を強調する山城拓馬監督。その上で「選手はキングスの看板を背負っている。学校や日常生活を含め、応援される人間性を持ってもらいたい」とトップ選手になるためプレー以外の学びも重視する。

 Bリーグは21年までに各球団に高校世代のU18ユースチームの保有も求めている。国内の育成環境の劇的な変化の波は、今後の沖縄バスケにも確実に影響していきそうだ。