「この時季は修学旅行シーズン。長蛇の列ができていたのに…」 観光客減も前を向く 再建へ地域に一体感 首里城周辺


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首里城にスマートフォンを向ける観光客ら=29日、那覇市の首里城公園

 那覇市の首里城周辺には29日、変わり果てた姿を目に焼き付けようと朝から観光客や修学旅行生が足を運んだ。沖縄の象徴を失った火災から1カ月。人通りが減り残念がる声も少なくないが、県外から訪れた人たちは「再建まで応援する」。地元の人も「にぎわいを取り戻す。前を向くしかない」と力を込める。

 「この時季は修学旅行シーズン。火災前は守礼門前で記念写真を待つ長蛇の列ができていたのに…」。1976年から記念写真販売をしている琉装苑の牧野貞裕さん(71)は肩を落とす。

 売り上げは「7割…いや5割程度かな」と激減。それでもこの日、約40年前の新婚旅行で写真を撮影したという夫婦が訪れた。「今も家に飾ってあるんだって。『頑張って』って励まされちゃった。やるしかないね」と歯を食いしばる。

 愛知県から友人と来た石黒裕子さん(60)は正殿の再建前と後に訪れたことがある。「朱色の立派な建物が印象的だった。残念ではあるが、また再建された時に沖縄に来る理由ができた」。

 落ち込んでばかりもいられない。近くに住む金城ヨシ子さん(87)は「まだ来てくれる人がいるだけ心強いよね」と気丈に語る。飲食店「癒酒屋こんちわ」と隣接するネパール料理店「カスタマンダップ」は12月8日にチャリティーイベントを開く。「街が沈んでしまったら駄目。自分たちが動かないと」。こんちわの多和田剛代表(48)の声は力強かった。