海と出合い人生が180度変わった 北国から南国へ 教員から漁師へ


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 【北大東・糸満】「北大東島で人生が180度変わった」。葉名尻享(はなじり・すすむ)さん(36)=糸満市在、北海道函館市出身=は、教員の道に進むべきか迷っていた時、臨時教諭として赴任した北大東島で海と出合い、漁師になった。セーイカとマグロを求めて漁に励む。糸満市を出港後は海上で1カ月ほど孤独な作業が続くが「気を遣わないのでストレスがない。本当に幸せ。北大東に来なければ、海に接することはなかった」と絶海の島での出合いに感謝する。

北大東島での出会いをきっかけに漁師になった葉名尻享さん。「悔いのない人生を送りたい」と大好きな海で漁に励む=11月21日、北大東村の南大東漁港北大東地区

 葉名尻さんは、体育教諭を目指し琉球大学に進学。同大大学院を卒業後、24歳で北大東小学校に臨時教諭として1年間赴任した。

 教育学部で学んだものの進路に迷っていた。そんな時、北大東の知人に誘われ、タコを捕りに海へ。祖父が漁師で幼少から海が好きだったが、最初は潜って鼻血を出すこともあった。

 休日は海で過ごし、30メートルほどの深さまで潜れるようになった。「思い通りにいかない時でも、潜ると何も考えない。目の前の魚を捕ることだけに集中する」と海の魅力を語る。

 任期を終え、沖縄本島に帰った後もスッキリしない。「人生一度きり。好きなことをやろう」。26歳で北大東島に戻った。2年間、民宿で働きながら島の人たちの指導の下、潜って伊勢エビやタコを捕った。

 結婚を機に沖縄本島に帰り、セーイカ漁の船に乗った。独立して3年で14トンの漁船「海香(みか)丸」とボートを購入した。

 現在はマグロとセーイカ(11月~5月)を捕り、悪天候時は南大東漁港北大東地区に避難する。葉名尻さんは「島ではいつも歓迎してもらっている。何かあった時には手伝い、島に恩返しをしたい」と日焼けした顔で力強く語った。

(豊浜由紀子)