土地の転売相次ぎ家賃も上昇…村民は村外に住まわざる得なく 沖縄屈指のリゾート地、開発圧力にさらされ 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉14


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沖縄国定公園の海岸沿いに立ち並ぶホテル=11月25日、恩納村名嘉真

 恩納村の国道58号沿いにはホテルがそびえ立つ。人気の観光リゾート地として国内外から観光客が訪れる。ここ数年で大規模リゾートホテルやマンションの開業も相次ぐ一方、自然の劣化や生活環境が悪化する懸念の声も上がる。

 恩納村冨着区は、リゾートホテルが立ち並ぶ一方、家賃の値上げや村民が村の外に住んで通う空洞化が起きている。国道58号沿いは土地の転売が相次ぎ、商業施設や居酒屋も増加。仲村兼富区長は今後、一層の商業化が進むことを懸念し「若者が定住できる村にしてほしい」と話す。

 同区の大型開発は海岸沿いはほぼ終わり、現在は高台に移っている。同区が所有する高台の土地も業者から売買の相談が持ち掛けられたが、村営住宅用の土地を確保するため売却を断っている。別の業者は地元を通さず住民が使ってきた冨着ビーチの占有を進めようとしたが、仲村区長は阻止した。「山から川が流れ海に注ぐ。かつては芽吹きの時期には、人は山に入らず、サンゴの産卵期には海に入らないという決まりがあった。昔ながらの生活やしきたりを尊重したい」。日々、開発圧力にさらされながら住民と業者の間で地域にとって譲れない一線を守る難しさをのぞかせる。

 そもそも読谷村残波岬から国頭村辺戸までの海岸沿いは、沖縄国定公園に指定され、自然公園法で建築が規制されている。県自然保護課の担当者は「毎日、県内外から多くの問い合わせがあるが、申請に至らない業者も多い」と述べ、同法の規制が開発行為に一定程度の歯止めになっているとの見方を示す。

 同法は保護と同時に公園を国民が公平に利用するため宿舎事業を認めている。同法で規制する建築物の高さは分譲地では10メートル、その外では13メートル内。一方、県の審議会などを経て宿舎の認可を受ければ、村のリゾート用域として高さ40メートルの建築も可能となる。

 7年前、フランス人の夫や2人の息子と恩納村の希望ヶ丘地区に移住したブルデ恵さん(42)は真向かいのホテルの開発申請を認可した県を相手取り、2018年6月、認可の取り消しを求め訴訟を提起した。国定公園の中のホテル認可が違法だと訴えたのは全国で初めてだ。「移住者であっても国定公園を守り、海や生態系を守るのは住んでいる人だと声を上げることが大切」と話す。同ホテルは宿舎として認可を受けたが、ブルデさんは分譲を想定したホテル建設や眺望の妨害は違法だと訴えている。

 開発や行政法に詳しい法政大の五十嵐敬喜名誉教授は自治体が独自の基準を設けて建築を規制することが大切だと話す。

 沖縄の観光振興の在り方について「安易に箱物を造る開発ではなく良い開発とは何か、真剣に各地のリゾート地を見て勉強すべきではないか」と指摘。沖縄の魅力について「自然と伝統に彩られ、自然遺産と文化遺産を両方持つ島は世界中どこにもない。言葉だけの“持続可能”だけではなく、50年、100年先を考え、地に足を着けて取り組むべきだ」と提起する。

 県経済の発展を支えてきた観光だが、質の向上や、自然環境の保全と経済活動の両立を目指す県にとって今後の対応が試金石となる。

 (中村万里子)
 (おわり)