ホテル稼働率、宿泊収入が低下、住宅投資に落ち着き…好調沖縄経済に変化の兆し 関係者「地価下落も」


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 観光客の増加や底堅い建設需要に支えられ、長期にわたって好調を維持している県内の経済環境に変化の兆しが現れている。おきぎん経済研究所やりゅうぎん総合研究所がまとめた県内景況によると、ホテルの稼働率や宿泊収入が前年同期を下回る傾向が続いている。アパート建設など住宅投資にも弱含みの動きが見られる。県内の経済関係者は、宿泊施設の競争激化やアパートなどの供給過多が背景にあるとみている。

国内外の観光客でにぎわう国際通り。周辺には多くのホテルが立地する=4日、那覇市

供給過多

 沖縄を訪れる観光客数は2018年度に1千万人を超え、那覇空港第2滑走路の供用開始でさらなる増加を予想する見方もある。観光需要を取り込むため、近年は国内外のホテルが県内に進出しており、各施設の競争も激しくなっている。県内のホテル関係者は「(宿泊施設の)供給過多になっていることは間違いない。入域観光客は増えているのに、ホテルが潤わない状況になっている」と頭を抱える。

 那覇空港の滑走路増設後も格安航空会社(LCC)が多く就航した場合は、民泊など安価な宿泊施設を求める観光客が増えて、高級なホテルが集客に苦しむとの見方もある。りゅうぎん総合研究所によると、安価な民泊に引っ張られるようにホテルなどの宿泊価格も下がる傾向にあり、宿泊収入の減少につながっているという。ホテル関係者は「客室単価を下げないと宿泊者を呼び込めない。韓国客も大幅に減少しており、今は最悪の状況だ」とため息をついた。

今がピーク

 県内の新設住宅着工戸数は8月と9月は前年同月を上回っているものの、4月から9月までの年度累計は前年同期比6・8%減となった。おきぎん経済研究所は「景気拡大を背景に近年は住宅着工戸数が好調に推移してきた。しかし最近は落ち着きを見せ始めており、中でもウエートの高い貸家が全体を押し下げている」と説明する。要因として建築資材の高騰や人手不足が考えられ、建設作業員が確保できず先送りになっている案件もあるという。

 県内の不動産関係者は、マンションやアパートの供給が増加してきた一方で、地価の上昇に伴って販売価格が高騰しており、買い控えなど需要の冷え込みにつながっているとみている。最近は住宅やマンションが売りにくい環境になっているという。

 これまで県内ではホテルへの投資が地価上昇をけん引してきた側面もあるが、同関係者は「ホテル需要も一巡したように思う」と分析する。消費増税により投資への意識が低下し、東京五輪後には建設需要が減少することも予想される。同関係者は「県内の地価は今がピークかもしれない。これから下がる可能性もある」と指摘した。

(中村優希、平安太一)