沖縄研究奨励賞に4氏 自然科学に富永、西辻、有本の各氏 社会科学は山本氏 来月、授賞式


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(上段左から)富永篤さん、西辻光希さん(下段左から)有本飛鳥さん、山本章子さん

 【東京】沖縄協会(野村一成会長)は5日、沖縄を研究対象にしている50歳以下の新進研究者を表彰する第41回沖縄研究奨励賞の受賞者を発表した。自然科学部門で、富永篤琉球大准教授(41)と、西辻光希沖縄科学技術大学院大学研究員(36)と有本飛鳥広島大大学院助教(31)の共同研究、社会科学部門で山本章子琉球大講師(40)の3件4氏が選ばれた。授賞式は来年1月23日、那覇市のパシフィックホテル沖縄で開かれる。

 富永さんは「沖縄における両生類の系統分類および生物地理に関する研究」で、細胞にあるミトコンドリアDNAの解析手法を用い、琉球列島固有の両生類が島しょ内でどう遺伝的交流をし、分断してきたかの歴史を明確化した。琉球列島にとどまらず、日本列島や東アジア地域に広がる種の多様性の研究や新たな系統地理学をリードするものと期待されている。

 西辻さんと有本さんは「沖縄県特産の海藻類ゲノムに関する研究」で、オキナワモズクにあるフコイダンの遺伝子は二つの遺伝子が融合したもので、より効率よくフコイダンを作り出せるようになっているとの新たな知見を得た。養殖地域の特異性も明らかになり、品種改良など実用面でも幅広く応用できると期待された。

 山本さんは著書「日米地位協定―在日米軍と『同盟』の70年」で、地位協定の歴史や運用実態、海外の事例に加え、新たな資料も分析して地位協定の限界と矛盾点を明らかにした。中でも日米安保改定時に作成された地位協定の合意議事録が「非公開=密約」とされてきた不合理性を明らかにしたことが重要な成果だと評価された。