[日曜の風]心の距離 国会より沖縄が近く


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 帰宅して郵便ポストを開けて思わず「わあ」と声をあげた。注文していた沖縄のTシャツが届いたのだ。

 首里城のイラストと「ホープ・トゥ・リビルド(再建への希望を)」と英語で記されたこのTシャツを買うと、1枚あたりの原価を差し引いた3千円が支援窓口に寄付されるそうだ。情報を知って私はすぐに家族の分など3枚を申し込んだが、注文が殺到してあっという間に販売は終了となった。

 このショップの利益は出ないのに、私のような人が全国から申し込み、制作や発送に追われただろう。それにもかかわらずとても丁寧に梱包(こんぽう)されており、お礼が印刷された美しい首里城のカードも入っていた。作っている人と注文した人との気持ちがつながるのを感じた。

 私は東京に住んでいるが、すぐ近くにあるはずの国会の中とは、あまり気持ちが通じ合わない。先日、安倍総理は、「桜を見る会」の名簿をシュレッダーで廃棄した日程が野党議員が追及した直後だったことを問われ、「担当したのが障がい者雇用の短時間勤務職員で時間の調整が必要だったから」という答弁をした。

 障がいのある人も働けるようにいろいろな法律や制度ができつつあるが、わざわざ国会でそんなことを言う必要があるだろうか。追及を避けるために「障がい」を盾にしたなら許せない。「差別されることはないはずです。障がいに配慮してもらいながら働けますよ」と障がい者雇用の制度を利用するよう、診察室で患者さんに勧めることもある私は、心の底から怒りを感じた。

 すぐ近いのに気持ちが通じ合わないこともあれば、遠いけれどしっかり心が結ばれることもある。沖縄とのつながりをこれからも大切にしていきたい。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)