沖縄関係5税制、大きな議論にならず 沖縄への厳しい見方も容認へ楽観論強く 振計見直し時期重なる2年後に課題 〈経済アングル2019〉


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 2020年度改正の沖縄関係5税制には、航空機燃料税の軽減措置など沖縄にとって重要な項目が盛り込まれており、延長方針の決定に関係者は胸をなで下ろした。一方で2年後に訪れる次回の見直しは、沖縄振興特別措置法の期限切れの時期に重なる。関係者から「振計の見直しを見据えた議論が必要だった」との意見も上がった。

 「制度を維持していく方向になるのではないか」。2日の自民党の税制調査会小委員会終了後、甘利明税調会長は沖縄関係税制を延長する見通しを示した。この日の審査では「検討し、後日報告する」を意味する「△」査定だったが、甘利氏は踏み込んで発言した。

■昨年から一転

 航空機燃料税の拡充があった昨年から一転し、単純延長の要望のみだった本年度分は当初から楽観論が強かった。11月上旬に上京した県内経済関係者は「今年は大丈夫だろう」と話した。

 唯一の懸念は航燃税の軽減措置だった。航空機が積む燃料への課税を、沖縄路線に限って本来の半額となる1キロリットル当たり9千円に軽減するものだ。本年度は沖縄路線とは別に、全国の国内路線に適用される軽減措置も見直し時期だった。航空大手の経営危機を受けて同1万8千円に軽減するものだが、経営回復に伴って見直し圧力が強まり、沖縄関連分もあおりを受ける可能性があった。

 沖縄振興に携わる議員らは、首里城焼失の観光への影響を緩和する必要があるとして、継続を訴えた。内閣府幹部は「特措法の期限に合わせ、税制などの効果の検証もまさに今進めているこのタイミングで、税制をいじる理由はない」との見方を示した。

■「その後」

 本年度の県や経済団体の要請内容が単純延長の実現にとどまり、自民党内には21年で期限を迎える沖振法の「その後」を見据えた議論が少なかったことを指摘する声が上がる。

 税制改正を議論する、2日の自民党税調マルバツ等審議では、国場幸之助衆院議員が「復帰特別措置に伴う揮発油税の軽減措置については、復帰して何年たつんだという厳しい声もある。しかし沖縄の地理的条件が変わらない以上は、国策として引き続き延長を」と述べ、長期的な支援を求めた。だが、全体の議論としては大きなテーマにはならなかった。

 党関係者は「税調の議論は継続性があり、過去にどのような議論が行われたのかも重視される」と指摘する。全国各地で人口減少や地域の衰退が顕著となる中、経済が好調な沖縄に対して振興策を続けることに厳しい見方も出ている。同関係者は「要望内容が単純延長で比較的ハードルが低かった今年だからこそ、現在の沖振法の、その後を見据えた議論をもっとすべきだった」と語り、今後の税制論議の方向性を懸念した。
 (知念征尚)