母の変化に救われた… 不登校・引きこもり当事者の本音 山田ルイ53世さん「会話や交流が過剰かもしれない」


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シンポジウム「引きこもりのホンネ」で体験や思いを語る、山田ルイ53世さん(左端)ら登壇者=1日、北中城村のイオンモール沖縄ライカム

 引きこもりや不登校を経験した当事者とその親が、それぞれの体験や思いを語る「不登校・引きこもりのホンネ」(アソシア主催)が1日、北中城村のイオンモール沖縄ライカムであった。基調講演をしたお笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世さんが、沖縄大学の島村聡准教授とテンポのいい掛け合いで笑いを誘い、登壇者の本音を引き出した。

 当事者の1人、崎原旦陽(あさひ)さんは小中学校で不登校になった。「行きたいのに行けない。行けない自分はおかしいと思った」と振り返った。新屋勇太さんは高校時代に起きたパニックの発作がきっかけで20~24歳に引きこもった。自分の思いを話せず、1人で抱え込んでしまったことが重圧になったという。大城有澄佳(あすか)さんは摂食障害から高校で不登校になり、適応指導教室に通いながら卒業した。今も短い引きこもりを繰り返し「情報を遮断して引きこもる時間が必要」と分析した。

 ■親も苦しむ

 崎原さんの母盛子さんは「忙しく、きちんと子どもに接していない負い目があった。今と違って専門職にも『学校は行った方がいい』と言われ、必死で連れて行こうとした」。息子の旦陽さんは「分かってもらえず孤独を感じ、本当に苦しかった」と打ち明けた。親子とも苦しむ状況を山田さんは「自分も『親の人生を破壊してしまった』と申し訳ない気持ちがある。子どもが引きこもっても、親は自分の趣味をやめないでほしい」と語った。

 ■高い「普通」のレベル

 引きこもりから脱したきっかけを、旦陽さんは半ば無理やり連れて行かれた適応指導教室で仲間を見つけ「ここでもいいんだ」という安心感を得たことを挙げた。新屋さんは「このままでいいのかという自己嫌悪があり、自分の中で引きこもる期間を設けていた」。

 大城さんは適応指導教室で、それぞれのペースで過ごせる友人を得たことを挙げた。会話が多かったわけではないが、共に過ごした仲間とは今も交流が続いているという。大城さんの発言を受けて山田さんは「周囲の『普通』のレベルが高すぎる。会話や交流が過剰かもしれない」と「普通」を求められる苦しさを語った。

 「学校に行かなくてもいい」と思えるようになった背景を盛子さんは「同じく不登校である息子の友達は純粋で優しい。その子たちを見ていて無理に行かせなくてもいいのではという気になった」と振り返った。母の変化を旦陽さんは「今でも覚えているくらい救われた」と答えた。

 大城さんはうれしかった親の対応として、父との夜中のドライブを挙げた。大城さんは後部座席に座り、互いの顔も見えない中、しんどさを打ち明けることができた。父は黙って聞いてくれたという。「返事は求めていない。ただ聞いてくれ、1人じゃないと感じられた」とかみしめた。

 親も苦しむ中、盛子さんは親の会が助けになったという。「自分を責めていたが、会にはすてきな人がたくさんで、自分も大丈夫かもと救われた」と語った。

 ■サービスなどに課題

 山田さんは「久しぶりの電話で声が出ないなど『引きこもりあるある』をネタに一緒に笑える場があればいい」と提案。会場からは質問も相次いだ。登壇者は「診断書がないと福祉サービスを受けられない」「福祉サービスでは自分のペースで過ごせるが、そこから出るとハイペースで自分のペースを否定されるのが苦しい」といった課題を指摘。「周りに気持ちを伝え、頼ることで発散でき、仕事も続けられている」など以前との違いも語った。