【記者解説】自治基本条例廃止案否決に至ったわけとは…


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自民会派議員らが提案した石垣市自治基本条例の廃止条例案を賛成少数で否決した市議会=16日、石垣市議会

 石垣市議会が市自治基本条例の廃止条例案を否決したのは、鍵を握った与党の非自民系議員3人のうち2人が反対したことが大きい。自民系議員の進める議論に与党内からも批判が出た形だ。本会議での提案者の説明は、住民のまちづくり参画を拒む意図をにじませた。住民の意見を聞かないまま進めたため、市民からも強い批判が出た。自民会派は今後、現在の自治基本条例に代わる新たな条例の制定を目指す考えだが、幅広い層の市民がまちづくりに参画しやすい条例策定を目指す議論をしない限り、同じ批判が巻き起こるのは必至だ。

 野党側は廃止に向けた議論に“お墨付き”を与えるのを避けるため、自治基本条例に関する調査特別委員会への参加を拒んだ。だが野党が加わっていれば特別委から続く「廃止ありき」の結論にブレーキを掛けられた可能性は否定できず、その責任は小さくない。

 ただ廃止を目指す自民系議員の手続きの強引さが際立った。特別委の議論から一貫して条例が存在することによる具体的な支障は示さず、条例の有効性への疑問が直接廃止に結び付く根拠も示されなかった。

 16日の本会議で提案者の石垣亨氏は最高議決機関は議会だとして審議会設置の必要性を否定した。「条例がなくなっても多くの住民には関係ない」とも発言した。住民投票をはじめとした市民の政治参画の根拠となる自治基本条例を廃止することで、市民の政治参画を避けたい思惑をにじませた。

 廃止に際し、住民の意見を聴取しないという手続きのずさんさも浮き彫りになった。これらの側面が住民からの強い反発を招き、与党内からも批判が出る結果となった。
 (大嶺雅俊)