米軍の「メディア選別」過去にも 訓練公開に5社限定、地元招かず 識者「県民軽視の表れ」


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 米空軍は11月25日、空中給油訓練を一部の報道機関に公開したが、琉球新報や沖縄タイムスなど地元紙を含む大部分の社に招待を出さなかった。理由を問い合わせている本紙に対して1カ月たとうとする19日現在も回答していない。米軍は過去にも「メディア選別」をしてきた経緯がある。有識者は「地元紙の軽視は、県民を軽視することにつながる」と指摘している。

 航空団は11月中旬、一部の報道機関に招待のメールを送った。訓練公開の取材には招待を受けた読売新聞と産経新聞、共同通信、OTV、RBCの5社7人が参加。招待を受けた記者の一部は事前に他の報道機関にも呼び掛けるべきだと指摘したが、米軍が方針を変えることはなかった。

 当日に開催を知った本紙記者らが電話をかけても航空団広報は取らず、メールも返信しなかった。一方、SNSの日本語版アカウントでは一部の報道陣が取材する様子を撮影した写真を投稿し「報道機関の方々を招いた」取り組みとして発信した。

 本紙は訓練公開当日の11月25日から毎日、広報直通の番号に電話をかけ続けたが、担当者につながったのは同29日。その際、担当者は「メールで回答する」としたが、12月19日現在、回答はない。

 一方、11月25日に米軍機がパネルが開いたまま緊急着陸していた問題については翌日すぐに安全性を強調する公式声明をメールで発信した。

 立教大学の砂川浩慶教授(メディア論)は「沖縄での地元2紙の役割は米軍も分かっているはず。県民のさらなる不信感を招くという認識が甘い」と批判。回答さえ寄せない米軍の姿勢について「公式に反応を示さないとしても米軍関係者が新聞を読むことはある。報じ続けるしかない」と指摘した。

 米軍のメディア選別は繰り返されてきた。05年にはイラクに派遣された部隊が帰還する際、米海兵隊は一部メディアを基地内に招待し、地元2紙を排除した。招待した報道機関の公平性を理由に挙げ「通信社から配信される」と説明した。他にも、在沖米軍トップの四軍調整官への本紙インタビューに対して時間がないと応じない一方で、NHKや共同通信の取材に応じていたこともあった。

 山田健太専修大教授(言論法)は「報道機関が力を合わせ、情報を持つ側との力関係を均衡にする努力が重要だ。とりわけ沖縄では地元紙が排除されてきた経緯がある。各報道機関がメディア選別を許さない姿勢で一致することが必要だ」と指摘した。
 (明真南斗)