自作紅型に母への感謝 式典で着用 「産んでくれてありがとう」


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母・章子さん(右)への感謝を込めた自作の紅型衣装で成人式に参加した高田涼海さん=12日、那覇市の小禄中学校

 県立首里高校染織デザイン科出身の新成人・高田涼海(すずか)さん(20)が、卒業制作で作った紅型衣装を12日、那覇市の小禄中学校区成人式で身にまとった。衣装の作品名は「カムサハムニダ ありがとう」。普段は言えない母・章子さん(57)への感謝を込めた。

 高田さん家族は、涼海さんが2歳の時に静岡県から那覇市へ引っ越した。涼海さんは小学校高学年から反抗期になったが、章子さんは「こんなに大きくなって良かった」と思い、見守り続けた。涼海さんを出産する時、切迫早産で4カ月入院し、何とか無事に授かった命だからだ。

 章子さんは紅型が好きで、子どもたちに染織デザイン科への進学を勧めていた。反抗期の涼海さんがその通りに進学したのは意外だったが、涼海さんも幼い頃から母と紅型を見るうちに好きになっていた。

 卒業制作の紅型衣装は約1年かけて完成させた。作品の説明には「普段は恥ずかしくて口にできない感謝の気持ちも、この着物を着てなら言える気がします」とつづった。成人式を迎え、章子さんは「もう思い残すことはない」と笑顔。涼海さんは「産んでくれてありがとう」と照れくさそうに感謝した。

 涼海さんは首里高在学時、修学旅行生を首里城に案内する機会があり、観光の仕事を志すようになった。現在は千葉県の大学で観光を学ぶ。だが昨年10月31日、くしくも涼海さんの20歳の誕生日に首里城が焼失した。首里高の仲間と「成人したら首里城で記念撮影しよう」と話していたが、それもかなわなくなった。それでも涼海さんは前を向く。「将来は紅型や首里城といった沖縄の伝統文化を紹介していきたい」と目を輝かせた。
 (伊佐尚記)