豚コレラ、殺処分後の豚の行方で二転三転 埋却地確保急ぐも混乱するわけとは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄市内で殺処分された豚5千頭の埋却を予定する養豚場内の埋却地=沖縄市(県提供)

 県内で豚コレラ(CSF)の発生が確認されてから13日で6日目に入り、うるま市、沖縄市の計6養豚場で初動防疫作業が進んでいる。うるま市内では殺処分と死骸の埋却まで完了し、沖縄市内でも13日までに殺処分がほぼ終了している。ただ、沖縄市では新たな感染があった場合の余力の確保も含め、埋却地探しが続いている。県は死骸を焼却処理することも選択肢として準備を進める。

産廃受け入れ課題も

 沖縄市内では養豚場3カ所が豚コレラの殺処分対象となっており、5千頭以上の埋却に向けて作業が進む。10日に市内で1件目となる感染豚が確認された際には埋却場所が決まっていなかったが、11日の2件目の発生となった養豚場敷地内に広めの空き地があったことから、埋却を始められるめどがついた。

 沖縄市内で殺処分された豚の死骸は、13日午前0時に埋却の作業が始まった。県の担当者は「(豚コレラが)発生した農場の近くで全て埋却できると報告を受けている」と見通しを語る一方、関係者からは「本当に(沖縄市の)今の場所で容量が足りるのか」と不安の声もある。  農水省の特定家畜伝染病防疫指針では、原則72時間で殺処分や埋却などの防疫措置を完了することが求められる。沖縄市で現在の埋却地の容量に収まりきらず、新たな場所の選定もできなければ、防疫措置が遅れ感染拡大につながる恐れもある。

 引き続き別の埋却候補地の確保を急いでいる沖縄市は12日に、米軍嘉手納弾薬庫地区内の知花地区北側の市有地3千平方メートルについて米軍から使用の承諾を得たと発表した。

 しかし、同地は現場に向かうまでの通路が狭く、重機の搬入が困難なことなどの課題もあり、視察した関係者などに「埋却地として使うのは困難だ」との見方が広がる。市は、機材の搬入方法などで技術的な対策が可能かどうかなど検討を続ける。

 知花地区が使用ができないと判断された場合、県は「(別の)市有地や県有地を活用できるか検討を進める」とし、今後の動向は不透明さが続く。

二転三転

 埋却地の確保が困難な場合を見据え、殺処分した死骸を破砕・煮沸して無害化する「レンダリング(化製処理)装置」の導入に向けた準備も始まった。死骸をミンチ状に破砕し、煮沸でウイルスを死滅させることにより、産業廃棄物として焼却・埋め立てができるようになる。死骸の埋却に比べ、焼却することで最終的な処分容量も圧縮される。

 国内では同様に埋却場所を確保できなかった大阪府が、同装置を使った死骸の処理を行っている。ただ、移動式のレンダリング装置は国内に農林水産省が所有する1基しかない。県の要請を受けて国は14日に装置を沖縄に向かわせる方針だが、船舶輸送で17日前後の到着となる見込みだ。

 焼却処理は埋却地問題の解消につながる一方で、感染症の疑いがある家畜を処理した廃棄物の受け入れについて、産廃業者の理解を得る必要など、新たな問題が出てくることも予想される。県は「殺処分した死骸を埋却する方法の方が防疫作業としては早くて確実だ」として、引き続き埋却処理を前提に候補地の確保も続ける。
 (平安太一)