沖縄での豚コレラ感染確認から1週間 24時間の防疫体制で人手不足 埋却地の確保に難航 ワクチン接種はどうする?


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
豚コレラに感染して殺処分された豚を、夜間も重機を動かして埋却する作業員ら=14日午前3時半ごろ、沖縄市の養豚場(県提供)

 県内で豚コレラの感染を確認して1週間が経過し、県内ではウイルスの封じ込めに向けた殺処分や死骸の埋却作業が進む。殺処分数は6農場で計7326頭に上り、新たな感染が発生した場合の埋却地確保など課題も出ている。ウイルスのまん延防止のためワクチン接種を求める声も強まる。感染ルートの解明や殺処分した豚の補償など、克服すべき課題も山積する。豚コレラ発生から14日までの経緯や今後の展望を探る。

■県、ワクチン接種は慎重に判断

豚コレラの4例目発生について報告する玉城デニー知事=15日午前9時47分、県庁

 豚コレラの感染拡大を防ぐ手段の一つとして、県はワクチン接種の検討も進める。接種で感染を抑える効果がある一方で、国によって輸出制約を受けるなどデメリットもある。県は豚コレラ発生場所から10キロ圏内の養豚場で家畜検査を進め、結果を見ながら接種の是非を判断する。玉城デニー知事は「感染状況を確認した上で、農家の方々の意見も聞きながら検討する」と強調する。

 ワクチン接種を行うと豚の体内にウイルスが入り込んでも症状が表れず、豚の移動により未接種地域にウイルスを持ち込んでしまう懸念もある。これを防ぐためには県内の飼育頭数全てに接種することが選択肢となるが、全国的に豚コレラが拡大する中でワクチン不足も指摘される。

 ワクチンを接種した豚の移動や流通は制限され、経済的な損失が出る可能性もある。

 ワクチン接種後、2週間程度で豚の体内に免疫ができる。肉用豚なら通常1回の接種で済み、母豚は3回程度接種するという。ワクチン接種ができるのは獣医師のみで、全県接種については人手不足を指摘する声もある。

 県内では飼育数が千頭を超える養豚場でも豚コレラ発生が確認されており、畜産関係者は感染拡大に危機感を募らせる。JAおきなわなど畜産団体は14日、県に対し早期のワクチン接種を求めた。

 県畜産課の仲村敏課長は14日、「無秩序な接種は汚染した豚の存在を分かりづらくして、よろいをかぶせてしまう。清浄性の確認検査に支障を来す恐れがある」として、慎重に判断する姿勢を示した。一方で「県としてワクチン接種を否定しているわけではない。常時状況を見ながら、必要と判断すれば速やかに接種したい」と話した。

■防疫作業、重機オペレーター不足も

殺処分された豚4682頭が埋却される沖縄市の埋却地=沖縄市(県提供)

 豚コレラ(CSF)の発生を受け、24時間体制で現場での防疫作業に当たっている県は14日、(1)夜間の重機オペレーター不足(2)埋却候補地の確保(3)防疫作業従事者の健康管理(4)消毒ポイント運営の委託先不足―の4点を現在の課題として挙げた。

 重機オペレーターについては、豚の死骸を埋める穴を掘るなどの作業で重機を操縦する人が不足していて、県職員で免許を持つ人も含めて従事者を集めているという。

 県建設業協会は、県と締結した防疫協定に基づき、会員企業やその協力企業などから600人超を派遣し、1日4交代制で24時間作業を支えている。年度末を控え公共事業の繁忙期だが、掘削や埋め戻しだけでなく運搬やトラックへの搬入も含め最大限協力した。

 建設業協会が協力する土木関連作業は14日で大部分が終わった。同協会は「今後、仮に新たに発生すると年度末工事の進捗(しんちょく)にも影響するので非常に厳しさはある。それでも防疫は優先してやらなくてはならない」と話した。

 作業従事者の健康管理は、現在保健師が防疫ステーションのうるま市具志川総合体育館に常駐し、本人から申告があった場合に保健指導をしている。今後は申告がなくても一定時間防疫作業をした人全てに保健指導を義務付けるように調整しているという。

 消毒ポイントの運営は、県や市の職員などで対応しているが、今後は長期化をにらんで民間業者への委託も含めて調整を続けているという。

■埋却地確保が課題に

沖縄市内の埋却地で埋却溝にブルーシートを敷く作業員ら=12日午前4時ごろ、沖縄市内(県提供)

 豚コレラ(CSF)発生を受けて、殺処分した豚を埋める埋却地の確保が課題となっている。

 8日に豚コレラの発生が初確認されたうるま市では、養豚場から約5キロ離れた市有地に約2千頭の豚を埋却した。

 一方で沖縄市では、一定の広さのある公有地が少なく難航した。10日以降に発生が確認された市内3養豚場の約5千頭については養豚場内の敷地に埋却できる見通しがついたが、今後別の場所で発生した場合に備えて引き続き候補地確保を進めている。

 12日には米軍嘉手納弾薬庫内の黙認耕作地内の市有地約3千平方メートルについて米軍の使用承諾を得たと発表したが、現場に向かう道路が狭く重機搬入が難しいといった指摘も出ている。

 埋却地では3年間はウイルスの拡散を防ぐために掘り起こすことが禁止されるため、跡地利用に大きな制限がかかる。

 農水省によると発生した市町村以外に死骸を移動して埋却することも可能だが、どの市町村も今後の発生に備えた容量の確保に不安を抱え、島しょ県の沖縄で埋却地が足りるかは不透明なままだ。

 大阪府などで事例のある、殺処分した死骸を破砕・煮沸して無害化する「レンダリング(化製処理)」導入に向けても手配を進めている。