沖縄の物語、世界に環流 「宝島」の真藤順丈さん講演


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「『宝島』のその先へ―沖縄と現代小説の発展」の演題で講話する真藤順丈氏=15日、那覇市のホテルロイヤルオリオン

 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・玻名城泰山琉球新報社長)の1月例会が15日午前11時半から那覇市のホテルロイヤルオリオンで開催された。アジア太平洋戦争後の米国統治下の沖縄を舞台にした『宝島』で第160回直木賞を受賞した真藤順丈さんが「『宝島』のその先へ―沖縄と現代小説の発展」と題して講演した。

 「宝島」は「戦果アギヤー」の英雄を巡る若者たちの人間模様を生き生きと描いた小説。真藤氏は「沖縄に来るたびに登場人物がどこかで生きていて、沖縄の社会情勢や事件との関わりを持って動いているのではないかと錯覚させる小説だ。その感覚を自分の中で突き詰めていきたい思いがある」と述べ、真藤氏自身にとっても特別な小説だったとした。

 また「宝島」の執筆中、2年間、書き進めることができず完成までに7年かかったという裏話を紹介。「直木賞を受賞できるぐらいの無類の面白い小説に仕上げて、当時の沖縄の物語をもう一度世界に環流させることができれば、書く意味があるのではないかと考え描き続けた」と当時の思いを語った。

 今後、「宝島」の派生作品として、戦後、沖縄で活躍した英雄たちを取り上げる読み切りの連作短編小説を文芸誌で発表することを明らかにした。

真藤順丈氏に拍手を送る琉球フォーラムの会員ら=15日、那覇市のホテルロイヤルオリオン