豚熱ワクチン接種は「長期戦」 継続必要で農家にのしかかる手数料負担


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 【東京】県内で豚熱(CSF、豚コレラ)の発生を受け、養豚業者から県内でワクチン接種を求める声が強まっている。全国的にワクチン需要が高まる中でワクチン自体を確保する必要があるほか、ワクチン代や接種に掛かる手数料の支払い負担が農家に発生する。一度接種が始まれば、10年程度の長期にわたって継続的に接種を続ける必要があるとされ、養豚農家には継続的な負担が生じる。

 農林水産省によると、ワクチンを接種するとなった場合のワクチン代は、県がメーカーから競争入札で調達する。国が過去に備蓄のために確保した際には、1本当たり60円程度かかった。ただ、ワクチン代は上昇傾向にあるといい、費用は増える可能性がある。

 家畜伝染病予防法では、ワクチン代の半額を国が負担する仕組みがある。

 ワクチン接種は家畜防疫員(獣医師の免許を持つ公務員)が担う。県内で全頭接種するとなった場合には防疫員の人数が不足する可能性がある。このため、国などから防疫に携わる人が応援に来ることが見込まれるが、この際の旅費も国が負担するという。

 実際に接種するとなれば、農家には手数料負担が生じる。値段は都道府県ごとに異なるが、1頭当たり300円程度が多いとされる。手数料は都道府県ごとに対応が異なり、16日から接種を始めた新潟県は、初回接種のみ手数料を免除するとした。

 一度接種が始まれば、ワクチンは継続的に打つ必要がある。環境により期間は異なるとされるが、農水省は「前回発生した際は10年くらい続けている。かなりの長期戦になる」と説明する。

 ワクチンを接種しても抗体が付かない豚が1割程度発生するとされ、感染の可能性は残る。子豚も生後1カ月程度は接種を受けられず、抗体がない個体は常に存在する。

 農水省は「飼養管理がおろそかになったりすれば、(抗体が付いていない豚に)ウイルスが入り込む可能性もある」と、ワクチン接種の“限界”も指摘した。その上で「それでも感染のリスクが下がるのは事実だ。メリット、デメリットを踏まえて判断する必要がある」と強調した。

 自民党国会議員の一人は、既存の豚熱発生地域ではおおむねワクチン接種が行われており、沖縄でも接種は避けられないとの見方を示した上で、「ワクチンを打てば安心、とはならない」と強調する。防疫体制の強化や農家の意識を保つ必要性を訴えた。