豚肉の輸出停止で企業に影響も 「ゼロは痛い」「対応必要」 長期化を懸念


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内で豚熱(CSF、豚コレラ)が発生したことで、8日以降、県内食肉業者らの豚肉の海外輸出が停止している。牛肉に比べると沖縄からの豚肉輸出額の割合は小さいが、近年、香港やシンガポール向けに県産豚肉の輸出量は増える傾向にある。今後、ワクチン接種が決まると輸出停止の期間が長期化することが予想されており、食肉業者には「影響が大きくなる」と懸念がある。

MIZUTOMIが販売している豚肉。輸出用も同様の塊で出荷している=17日、那覇市牧志

 豚肉の生産から加工、販売までを手掛ける那覇ミート(南城市)は香港とマカオに豚肉を輸出している。1月は旧正月の需要などがあり、豚熱の発生がなければ10トン以上を輸出する予定だった。同社は2018年度に78トンを輸出し、19年度は12月末時点で65トンを出していた。順調にいけば前年度を上回る80トン以上を見込んでいたが、豚熱の発生で見通しは厳しくなった。

 県内や県外出荷を含め、同社が取り扱う豚肉出荷全体から見れば輸出の割合はまだ2%程度にすぎず、今回の輸出停止が直ちに経営に打撃を与えるほどではない。それでも担当者は「年々輸出を伸ばしていた中でゼロになったのは痛い」と肩を落とす。

 一方で同社は豚の生産にも取り組んでいる。自社の農場に豚熱が広がることを強く警戒し、担当者は「感染拡大による殺処分で豚が全滅することを考えると、輸出再開が遠のくとしてもワクチン接種は必要かもしれない」と語った。

 豚肉と牛肉を香港、シンガポールに輸出しているMIZUTOMI(うるま市)は、年間40~50トンの豚肉を輸出している。牛肉は250~300トンを輸出しており、社の売り上げに占める豚肉輸出の割合は数%にとどまる。豚熱に伴う輸出停止について、高橋勇治常務は「経営的に大きな影響はない」と語る。

 豚肉に関しては全国で豚熱が発生した際も何度か輸出が停止した期間があるという。海外の取引先からは早期の輸出再開を望む声も聞かれており、高橋常務は「取引先からの要望もあるため、早期の終息を望みたい。養豚農家にとっては大きな問題であり、これ以上広がらないための対策は必要だ」と説明した。