【中部】「とてもショックで驚いているが、こんな大変な時こそ沖縄の『ゆいまーる』の魂が出てくる」。県内の養豚場で豚熱(CSF、豚コレラ)が発生したことを受け、養豚農家と縁が深い県内在住のハワイ関係者は、ハワイ県系人が互いに助け合った「ゆいまーる」の心で農家を支援しようと意気込んでいる。
ハワイの県人会組織ハワイ沖縄連合会(HUOA)で2006年に会長を務めた県系3世のヒガ・ラバーンさん(63)=中城村=は、うるま市で豚熱が発生したニュースに落ち込んだ。生まれ育ったハワイでラフテーや豚汁などの豚料理に慣れ親しんできた。昨年10月の首里城焼失に続く沖縄文化の危機に気をもんでいる。
1900年以降、沖縄から移住が進んだハワイ。敗戦後、食糧難に陥った故郷を救うため、県系人は豚550頭を48年、勝連村(現うるま市)ホワイトビーチに送った。豚は各地に配られて増え、ウチナーンチュの命をつないだ。
文化や言葉、歴史を勉強するため2009年に沖縄に移り住んだヒガさん。豚が到着したホワイトビーチの写真を手に「戦争で家族や豚を失い、とてもきつい時代だっただろう」と振り返り、涙をこぼした。
ハワイの豚を題材にしたミュージカル「海から豚がやってきた」で翻訳などに携わった牧師のオオシロ知佐子さん(50)=うるま市。沖縄で生まれ、ハワイで約15年暮らした。「ハワイの県系人は育ちは米国でも、親から話を聞いて沖縄のアイデンティティーや苦労した歴史を分かっている」と話す。
ハワイ関係者の間で豚熱発生のニュースは直ちに広まった。誰もがショックを受けて驚き、「何かできないか」と思案している。
ヒガさんは豚が殺処分されるなどした農家に対して「ちばりよー。こんな時にこそ本当の沖縄の力が出てくるので、祈っている」とエールを送る。オオシロさんは「農家の心を癒やすなど応援したい」と力を込めた。
(金良孝矢)