借金返済のために音大進学諦め養豚の道に 豚熱で苦境もハワイ県人の思い胸に奮闘 うるま市の赤嶺康さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
養豚業を営みつつ、ミュージカルやオペラの作曲もする赤嶺康さん=22日、うるま市

 【うるま】地元うるま市で、養豚業と編曲家の二足のわらじを履く男性がいる。養豚に約30年携わりつつ、戦後ハワイから豚が送られたことを題材にした音楽劇「海はしる、豚物語」にも作曲で参加したアカミネファーム代表の赤嶺康さん(48)だ。ハワイの豚が到着したうるま市で発生した豚熱(CSF、豚コレラ)で苦境に直面しているが、「ハワイ県系人の当時の功績が今につながっている。その思いを絶対に消さないようにしないといけない」と訴える。

 赤嶺さんはうるま市与那城西原で約580頭の母豚から約2500頭の子豚を生ませて育てている。搬出制限区域内にあるため出荷はできない。豚舎は生まれてくる豚で狭くなり、衛生的にも良くない状態が続く。「1週間でも制限区域を解除してくれたら助かるが、補償もあるのかどうか分からない」と心配だ。

 音楽が好きで音楽大学に行くのが夢だったが、養豚農家だった父の借金を返済するため音大進学は諦め、養豚の道へ進んだ。

 音楽を聴きながら寝る自身の体験をヒントに、豚がリラックスする音楽を探し始めた。クラシックやロックなどを試し、最も効果があったのは沖縄の古典音楽。豚の睡眠時間が増え、体重が増加したという。

 2年前にがんで亡くなった妻でピアニストの鈴木聖子さん(享年54)から「豚のための音楽をやったら喜ぶのでは」と助言を受け、ピアノで作ったBGMをCDにもした。音楽を通して多くの人と出会い、地元の阿麻和利を題材にしたオペラ「太陽(てぃだ)への門」も創作した。

 ここ10年は毎年、養豚業者と消費者の距離を縮めるコンサートを開催している。豚肉料理と音楽の両方を楽しむという趣向だ。「豚と音楽は違うようで一緒。子豚をどうやって生ませるか、音楽をどうやって生み出すか、常にリンクしている」と語る。

 養豚と音楽活動の双方に打ち込む赤嶺さん。「こういうことがやりたかったと最近感じている」と振り返る。豚熱の発生で先が見通せないが「農家は生産した豚を、子や孫に『安心だよ』と言って食べさせることができればいい」と願っている。
 (金良孝矢)