危険性放置され続け… 人口4500人の島で米軍事故が多発するわけとは


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 伊江村の民間地に米軍のパラシュートとプラスチック製の箱が落下した。同村ではこれまでも生活圏に物資や兵士が落ちる事故が繰り返されてきた。事故の背景には、米軍伊江島補助飛行場の構造的な危険性がある。面積は伊江島の35・2%を占め、周囲にも訓練水域・空域を伴い、島全体が訓練場化する。事故が頻発しているにもかかわらず、米軍の訓練内容は多岐にわたって認められ、危険性は事実上放置されてきた状態だ。

 1972年の沖縄の日本復帰時に在沖米軍基地の使用目的・提供条件などを定めた日米間の「5・15メモ」に基づき米軍は伊江島で訓練を続けている。海兵隊の管理だが、他の部隊も使用する。5・15メモは重量物投下訓練も認めており、2018年には村の中止要請に反して車両の投下訓練が実施された。日本政府も伊江島での訓練実態を網羅的に把握していないとみられ、米軍の思いのままに使われ続けている。

 米軍伊江島補助飛行場では19年10月に降下訓練中の米兵1人が民間地で県所有の伊江島空港に落下した。この問題で米軍は「指定された着陸地点に安全に降下できないと判断し、伊江島空港の開かれた場所に着地した」と述べ、意図的に民間地に降りたことを示唆した。

 最近では米海兵隊が新たな作戦構想の確立を試みており、パラシュート降下訓練を含む伊江島でのEABO(遠征前方基地作戦)訓練を重視している。強襲揚陸艦の甲板を模した離着陸施設があり、F35ステルス戦闘機が度々飛来し離着陸訓練をする。

 読谷補助飛行場の返還に伴い、日米両政府は96年、読谷村で実施されていたパラシュート降下訓練が伊江村へ移転することに合意した。だが伊江村での降下訓練を当然視することには、地元から反発がある。嘉手納基地内や、うるま市の津堅島訓練場水域では、通知した上で訓練を実施しても問題となる。対照的に伊江村では通知なくパラシュート降下訓練を実施するのが通例だ。

 今回のパラシュートと箱が落下した事故を受け、県は29日、沖縄防衛局に電話で原因究明と再発防止を要請した。米軍には抗議・要請をしない予定だ。担当者は「これまでの対応を踏まえた」と説明する。ただ、米軍機の部品落下事故や金武町での照明弾落下事故については、防衛局長らを県庁に呼び出すなどして抗議してきた。それとは対照的な対応だ。
 (明真南斗)