【東京】農林水産省の有識者会議は31日、豚熱(CSF)やアフリカ豚熱(ASF)対策として、豚、イノシシの飼養衛生管理基準の見直しを決めた。肉を含む食品残さ(残飯)を餌とする場合の衛生基準を引き上げ、かき混ぜながら90度以上で60分間の加熱処理を行う必要があることや、野生動物の侵入対策を義務化することが柱となる。
野生動物対策では、野鳥などが畜舎や飼料庫などに侵入することを防ぐ「防鳥ネット」の設置義務を新設する。野生のイノシシが生息する地域では、防護柵の設置も必要になる。
農家負担が高まることから、政府は同30日に成立した補正予算で、防鳥ネットの整備や消毒に必要な資材の確保にかかる費用の半額を補助する。
新設項目では家畜所有者の責務として「飼養する家畜について、家畜の伝染性疾病の発生予防およびまん延防止」を明記した。
機材、食品の取り扱いや車両や施設の洗浄・消毒方法などについて、農場ごとに飼養衛生管理マニュアルの策定も必要になる。従業員や農場を出入りする業者に周知する必要がある。
新基準は2月中の公布を予定する。農家の準備期間を確保するため、野生イノシシの防護柵や防鳥ネットの設置は11月、残飯の加熱処理強化やマニュアル作成などは来年4月から適用する予定だ。
飼養衛生管理基準の見直しを了承した31日の会議では、沖縄の豚熱発生農場で残飯の加熱処理が実施されていなかったことを踏まえ、委員から「実効性があるものにしてほしい」と指摘があった。
今国会に提出予定の家畜伝染病予防法改正案では、飼養衛生管理基準を守らなかった場合の罰則強化も検討されている。
基準を分かりやすく伝える必要性も指摘され、農水省は生産者向けのパンフレットや動画を作成するほか、指導者向けの手引書を改訂するなどして徹底を図っていく。