「人からもらった幸せは他の人にもつなぐ」 水難事故で亡くなった19歳の遺志を継ぎ基金設立


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川崎宇温さんの遺志を継いで設立した「琉球宇温基金」の助成金決定通知書を西田睦琉球大学学長(右)に手渡す父真一さん(中央)と兄明宙さん=25日、西原町の琉球大学

 子どもの貧困など沖縄の課題解決を志して琉球大学で学びながら、水難事故で2018年に19歳で亡くなった川崎宇温(たかはる)さん=京都府出身=の家族らが、宇温さんの「他の人にも幸せをつなぐ」という遺志を継ぎ、19年8月に「琉球宇温基金」を設立した。基金運営委員会はこのほど、川崎さんが登録していた子どもの居場所学生ボランティアセンターを運営する大学コンソーシアム沖縄とアメラジアンスクールを第1号の助成先に決定。家族が25日、琉球大学を訪ね、コンソーシアムへ目録を贈呈した。

 宇温さんは17年に琉球大学法文学部(現人文社会学部)に入学した。生まれつき左右の手足の長さが違うことに劣等感を覚え、高校生時代は「何で自分だけ不幸なんだ」と悩んでいたというが、大学入学後に一変。離島の地域活性化に関する活動やアメラジアンスクールの手伝いなど、生き生きと活動し始めたという。

川崎宇温さん(提供)

 父・真一さん(56)は「子どもの問題など、沖縄で数々の厳しい現実があることを知り『自分より苦労している人がいる』と言うようになった。ボランティアなんてやったことがないのに、積極的に参加するようになった」と振り返る。将来は地元に戻らず、沖縄に根差して活動する決意も語っていたという。

 ところが、18年に那覇市内のビーチで水難事故に遭い、志半ばで亡くなった。死後、真一さんが部屋を整理していると、パスポートなどの貴重品が入っている箱の中に「人からもらった幸せをそのひとだけじゃなくて、他の人にもつなぐ」と書かれた宇温さんのメモがあった。生前の宇温さんを知る琉大の野入直美教授は「自分で課題を発見してくる意欲的な学生だった」と語る。お別れの会には多様な人が参加し、宇温さんの活動の幅広さを物語っていたという。

 基金はみらいファンド沖縄を通じて寄付金を募っており、25日現在、約146万円が集まっている。大学コンソーシアム沖縄、アメラジアンスクールにはそれぞれ30万円を助成する。今後も基金を活用して助成を続けるという。