女性への性暴力、住民を恐怖に陥れる手段に コンゴの現実に言葉失う ジェンダー平等で学生と市民が対話


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 宜野湾市、沖縄キリスト教学院大、沖縄国際大と琉球新報社はジェンダー平等を考える産学官共同企画ワークショップを1日、宜野湾市の沖国大で開いた。大学生と一般市民の合計約80人がドキュメンタリー映画「女を修理する男」を鑑賞し、ジェンダー平等の実現へ意見を交わした。

ワークショップで、ジェンダー平等の実現へ人形の紙に書き込んだ意見を発表する参加者ら=1日、宜野湾市の沖縄国際大
ジェンダー平等の実現へ人形の紙に意見を書き込む参加者ら

 「女を修理する男」は、性暴力被害者の治療や精神的なケアを続けて2018年度ノーベル平和賞を受けたコンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏のドキュメンタリー。コンゴでは住民を恐怖に陥れる武器として女性への暴力が多発した。被害女性が地域で孤立し、加害者を裁く司法の仕組みも不十分な中、「子どもたちの権利のために」と立ち上がる女性たち、電子機器に使われる鉱物資源が紛争の原因となる現実も描かれる。

 参加者らは鑑賞後、グループに分かれて感想を話し合った。被害者が乳幼児におよび、外科治療ができないほど傷つけられることもあるといった現実に、当初は言葉も少なかった。「厳しい経験をしても子どもや地域のために立ち上がる女性たちに心を打たれた」(女子学生)、「私たちも使う資源を巡ってこのようなことが起き、身につまされる」(一般男性)などの感想が聞かれた。

 続いて、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールとされる2030年に向けて大切にしたいことを、人間の形に切り取った大きな紙に書き込んだ。額を付き合わせ手を動かしながら「女性や子どもの権利が守られる法整備」「現実から目を背けない」「教育」「貧困をなくす」などさまざまな意見で紙人形を埋めた。

 ボランティアを行うJRC部で参加した知念高1年の與座笑佳さん(16)、根間琴音さん(16)はこのような性暴力を初めて知ったといい、「感想を言葉にできなかった」と戸惑ったが「大学生は深く考えていてすごいと思った」(與座さん)、「身の回りに未来を考えるきっかけがあると思った」(根間さん)と話した。

 沖国大の前泊亮太さん(20)は「こんな悲惨な現実があるのか」とショックを受けつつ、グループの参加者の発言から「個人でも日本にいても、できることがあると気付いた」。那覇市の女性(69)は「若い人たちの柔らかな感性がすてきだった。作業をしながら話し合えるのが良かった」と笑顔を見せた。

 同様の産学官共同企画は昨年6月に続き2回目。平等で多様性のある社会実現に向け、市民講座などを開く宜野湾市・市民協働推進課の金城美千代課長は「社会人や親になる直前の大学生は一番アプローチしたいのに、しにくい世代。他の年代と話し合うことで気付くことが多かったのでは」と手応えを感じていた。キリ学大の玉城直美准教授は「『男女間の対話が大切』との発言もあった。当たり前のことを行う場を、地道につくっていきたい」と話した。

(黒田華)