沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)の新たな理事長に5日付で県情報産業協会副会長の稲垣純一氏が就任した。最先端のIT技術を活用し県内の産業全体を成長させる役割を担って誕生したISCOだが、必ずしも理念通りにはなっていない。県内IT産業の司令塔として、どのようにかじを取っていくのか聞いた。
―最も力を入れるのは。
「沖縄の未来は観光とITが重なったところで可能性が大きく開く。他の産業にもプラスの影響が作れる。一つのイベントだけでなく、一年中沖縄全体がリゾテックという状態を作らないといけない」
―県との関係を含めISCOの在り方は。
「県と民間がそれぞれ出資している。県の言うことを100%聞いてしまっては、発想を膨らませられない下請けになる。県の経済政策に十分沿いながら、民間の意見を遠慮せずに県にぶつけていく。民間にはISCOに関わってよりビジネスが広がったと思われないといけないし、県には外部にISCOを作ったことで施策がより活性化したと思ってもらわないといけない。独立的な団体として、主体的に未来を提言していくことが大事だ。すでに優秀な人が集まっており、持っている力を発揮できる場を作るのが私の仕事だ」
―5日の評議員会、理事会はかなり長い議論になったが。
「これまで人事で紆余(うよ)曲折したことの整理をして新理事長に渡したいという気持ちが強かった。みんなが納得できるイメージを共有できれば良かったが、1日では難しい。それぞれの考えがあるが、目的は同じなので時間とともになじんでくると思う」
―非常勤で年間100日程度の勤務日数、年間470万円以内という理事長職の待遇を巡っても議論があるがどう考えるか。
「将来的には、職員全員が素晴らしい給料を取れるような団体になればいい。そうなると、もっとパワーのある理事長が来てさらに優秀な職員が集まり、今いる職員もスキルアップしていく。将来そういう組織にするための仕事をしていくが、現段階では、ある程度公的な団体なのでボランティア精神も必要だと思う」
―沖縄のIT産業の課題は。
「沖縄の優位性として、リゾートの魅力があり優秀な人を集めやすいことやアジアとの良好な関係、充実した通信インフラ、公の支援などが言われてきたが、お題目に終わっている。テーマとしては正しくても戦略にできているか、戦略として正しかったけれども戦術として勝利できているかという実効性にも踏み込まないといけない」
―中小企業のIT導入意識を高めるには。
「意識が低いというよりは、自信がないのと投資の余力が少ないことが大きい。確実に費用対効果が上がるような即効性を見せていく必要がある」
(聞き手・沖田有吾)