御茶屋御殿、首里城復興とセットで復元を 事業主体や文化財指定など課題山積


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首里カトリック教会・幼稚園の敷地内に残る御茶屋御殿の遺構=2015年12月、那覇市首里崎山町

 那覇市議会(久高友弘議長)が5日、首里城の早期再建と御茶屋御殿(うちゃやうどぅん)(同市首里崎山町)などの復元を求める意見書を玉城デニー知事に手交した。久高議長は、県が本年度内にまとめる首里城復興基本方針に御茶屋御殿の復元を盛り込むことも求めた。首里城再建を機に、膠着(こうちゃく)状態にある御茶屋御殿の復元を前に進めたい考えだ。玉城知事は「那覇市とも協力しながら取り組んでいけるよう検討を進めたい」と前向きに答えたが、復元の事業主体や御茶屋御殿の文化財指定など課題は山積している。

 ■王国文化の発信地

 御茶屋御殿は1677年に創建された。冊封使らの歓待に使用され、文化の発信地だった。戦前は国宝の候補にもなったが、沖縄戦で消失した。現在は跡地に首里カトリック教会、付属幼稚園が建っている。県は2000~05年度に御殿の茶亭跡付近を調査し、石積み遺構が良好に残されていることが確認された。

 00年に民間の御茶屋御殿復元期成会が発足し、06年に市議会が復元を求める意見書を可決した。市議会や期成会による国への要請活動を受け、07年に国、県、市によるワーキンググループが設置された。御茶屋御殿の文化財指定や復元の事業主体、手法などについて検討してきたが、大きな進展は見られていない。

 ■卵が先か鶏が先か

 御茶屋御殿が戦争で消失したことなどから、市としては国が事業主体となり国営公園に組み込んで復元してほしいというのが基本的な姿勢だ。仮に県や市が事業主体になる場合は財源などの課題がある。市は復元に要する事業費を約33億円と想定している。

 一方、国の担当者は「国が復元整備をするには理由が必要だ。まずは国の史跡(文化財の一種)に指定されないといけない。また円覚寺は国の史跡だが県が整備しており、その違いについても説明できないといけない」と指摘する。だが御茶屋御殿が文化財に指定されるには文献資料も遺構調査も十分ではないという。遺構を本格的に調査するには現在建っている教会は移転しなければならない。

 カトリック沖縄教区と復元期成会は10年、教会の移転について協議を進めることに同意した。期成会によると、教会側は首里地域に教会と幼稚園が併設できる代替地を確保することを条件としているという。市は市有地の中から代替地となり得る土地があるかを検討している。だが「事業主体ではないので市から移転を持ちかけにくい」として、教会と直接協議したことはない。市の担当者いわく「卵が先か、鶏が先か」という状況だ。

 ■逃せないチャンス

 手詰まりの中、市議会も市も首里城復興基本方針に御茶屋御殿復元が明記され、実現への第一歩となることを期待する。久高議長は要請の場で「今回の方針から外されると復元は極めて厳しくなる」と危機感を示した。だが復元の難しさから、基本方針に明記できるか、盛り込むとしてもどのような表現になるかは不透明だ。基本方針に関する有識者懇談会はあと2回開催されるが、クリアすべき課題について、どれだけ議論を深められるのか注目される。
 (伊佐尚記)