組踊300年の次の時代に重要なこととは… 芸能研究家の當間一郎氏に聞く


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 沖縄が世界に誇る伝統芸能「組踊」が昨年、上演300周年の節目を迎えて沖縄の芸能界が盛り上がった。新たな年度を前に芸能研究家の當間一郎氏に、今後の芸能界に期する思いを聞いた。當間氏は初代親泊興照や真境名由康ら現代の沖縄芸能の礎を築いた実演家らと交流し、「沖縄藝能論考」や「組踊写本の研究」など多くの芸能関係の著作がある。

(聞き手 藤村謙吾)

組踊上演300周年の節目を終え、沖縄の芸能界への思いを語る當間一郎氏=5日、那覇市

 當間氏はかつて、真境名由康の那覇市の稽古場には島袋光裕や初代宮城能造、初代興照ら舞踊や地謡の先達が集まり、互いの芸能についてしばしば言葉を交わしていたことを振り返った。現在は指導者間の交流がかつてほどなく、上演に際して作品についての議論が深められていない可能性のあることを危惧した。

 その上で「今の芸能界のトップにいる方々が、流会派は違っても、台本の読み合わせなどをして、大きな先生方から教わってきた芸の確認をしていただきたい。また若い方々には、多くの先生のご意見を広く聞いて踊りの振りや組踊の唱えを構築してもらいたい」と力を込めた。

 また真境名、島袋、親泊、宮城、金武良章らが受け継いできた御冠船芸能継承の大切さに触れながら、地方にある組踊の発掘や保存に努める重要性も語った。

 當間氏は「集落単位で持っている組踊台本は確認させてもらえても、個人が趣味で書き写すなどして保存している台本の中には、存在は分かっても見せてもらえなかったものもある。地方に残る組踊台本は明治時代のものが多く、失われてしまったものもあるだろう」と指摘する。その上で「地域を挙げて保存に努めてもらいたい。また、地方に関わりのある実演家は自分の出身地の組踊や村踊にも力を入れてほしい」と、組踊のさらなる発展を願った。