PFAS汚染で一人娘が死亡 元米兵が米下院公聴会で証言 空軍は把握するも長年説明せず


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 県内の米軍基地周辺でも高濃度で検出され問題となっている有機フッ素化合物(PFAS)について、元陸軍パイロットが11日、米下院歳出小委員会で「空軍が長年使ってきた泡消火剤によるPFAS汚染で一人娘を亡くした」と証言した。自身の娘が難治性の小児がんを患い17歳で亡くなったのは、空軍が汚染を認識しながら説明せず問題を放置していたためだと訴えた。

有機フッ素化合物による汚染で娘が亡くなったと証言するジム・ホームズ氏=11日、米下院歳出小委員会(下院歳出委員会ウェブサイトより)

 証言したのは米陸軍のパイロットだったジム・ホームズ氏。フロリダ州のパトリック空軍基地の住宅地区に家族で16年住んでいた。ホームズ氏によると、この基地では米環境保護庁の定める生涯健康勧告値(1リットル当たり70ナノグラム)の5万7千倍に当たる高濃度のPFASが検出されたが、空軍は基地内や周辺に住む人々に知らせなかった。

 ホームズ氏は「基地や周辺に住む軍人や家族、市民の健康・安全への配慮は全くない」と述べ、この基地周辺の地域では他地域より高い割合で脳腫瘍や乳がんが発症していると批判した。

 ホームズ氏は「娘のカエラは美しく知的で愛情深かった。出会った全ての人にいい影響を与え、学校でも優秀で17年間一度もがっかりさせられたことがなかった」と振り返った。カエラさんは18年1月に突然「小児脳幹部グリオーマ」を発症し、完治する治療法はないとされた。1年3カ月闘病したが、19年3月、17歳の誕生日を迎えた3日後に亡くなったという。

 ホームズ氏は「私は軍に忠実に仕えてきたが、その軍によって唯一の子を亡くした。軍に所属して基地に住むという私の選択が娘を死なせた。それを思いながら残りの人生を生きなければならない」と目に涙をためながら話した。

 ホームズ氏は安全な飲料水を供給できるよう、パトリック基地周辺の全ての家に政府の負担で浄化装置を付けることを求めた。議会に対して有機フッ素化合物を含む泡消火剤を禁止するよう求め、空軍には「長年にわたって水を汚染してきた責任を負わせるべきだ」と述べた。

(明真南斗)