米軍、那覇空港を緊急時に使用も 「第2滑走路」過去に打診 普天間代替に


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3月26日から運用が始まる那覇空港第2滑走路=2020年3月15日

 那覇空港第2滑走路の使用が26日、始まる。那覇空港の滑走路増設事業は約2074億円なのに対し、辺野古新基地建設は政府の試算で4・5倍の約9300億円が見込まれている。日本政府は米軍普天間飛行場の危険性を除去する「唯一の選択肢」として移設に伴う名護市辺野古の新基地建設も同時に進める。辺野古移設が完了すれば普天間飛行場を返還できるかのように印象付けてきたが、米政府は他にも緊急時に使える辺野古新基地よりも長い民間の滑走路を求めており、那覇空港を使うことも視野に入れている。

 2013年の日米合意で挙げられた普天間飛行場の返還条件8項目には、辺野古新基地のほかに緊急時に民間の滑走路を使えるようにしておくという点が含まれている。「代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」という文言だ。

 2017年4月に米政府監査院(GAO)が出した報告書も代替施設の滑走路は短すぎると指摘している。普天間飛行場の滑走路は2800メートルだが、移設後の辺野古新基地は1800メートルが2本となる。ヘリやオスプレイなど回転翼機は対応可能でも長い滑走路が必要な固定翼機の離着陸には向かない。

 防衛省は具体的な場所や「緊急時」の定義を明らかにしていない。だがGAOの報告書では、緊急時に使える別の滑走路として12カ所の候補地があるとし、うち1カ所が県内だと説明しており、那覇空港が念頭にあるとみられる。

 GAOは1998年に出した別の報告書で「米軍機の緊急的な着陸場所として那覇空港が利用できる」と記載していた。08年に米政府が緊急時の那覇空港第2滑走路使用を日本側に打診したことも明らかになっている。県は「那覇空港の(米軍による)使用は認められない」との姿勢だ。

 この返還条件は17年に当時の稲田朋美防衛相が、辺野古移設が完了しても「普天間返還の前提条件が整わなければ、返還とはならない」と発言したことで注目を集めた。県はこの発言で普天間飛行場の早期返還という辺野古移設の目的自体が崩れたとして、埋め立て承認撤回の理由の一つにしている。
 (明真南斗)