【記者解説】新体制下の改革鮮明に 商品・組織、多岐に刷新 オリオンビール中期経営計画


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 オリオンビールのグループ中期経営計画の発表会見は、主力のビール類をはじめ、拡大するRTD分野に新しい商品を続々と投入していく姿勢を示し、市場の需要に臨機応変に対応するスピード感を前面に押し出した。

 組織や人事体制の刷新、県内外の販売戦略の再構築など、これまでの体制を覆す大幅な見直しが既に内部で進められており、沖縄社会への地域貢献活動は今まで以上に拡充する方針をアピールするなど、改革の項目は多岐にわたった。

 2019年3月の株式公開買い付け(TOB)成立から1年、新体制の下で取り組む方向性を消費者に向けて鮮明にした格好だ。

 中期計画の策定に当たってはマーケティングの手法を徹底し、数百~千人以上を対象にした県民アンケートを複数回実施することで消費者が抱くブランドイメージを数値化した。オリオンビールに対する県民の認知度は95・6%という高さだった一方で、早瀬京鋳社長は「県民は少しオリオンから離れているというショッキングなデータも出た」と明かす。

 ビール類全体では現在も県内トップのシェアを誇るが、19年度は44%と半数を割っており、量販店では1位でなくなる事例が出ているという。会見では「オリオンを絶対的なナンバーワンにする」という言葉が繰り返し飛び出した。

 一方で、3カ年の中期経営計画で目指す売上高や数量の目標値について、亀田浩常務は「5年以内の上場を目指しており、どういった経営数値を作るかが大切になる。上場に耐えられる数字なのか検討中で、まとまった段階で公表したい」と明言を避けた。

 「県民のビール」として地元シェアの回復に取り組むとともに、投資家向けに企業価値を示していくことが経営の重要な柱となっていることも明確になっている。
 (外間愛也)