「さよならスカート」自分らしく 選べる制服に喜ぶ生徒 「心の性」学校も配慮進む


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 2020年度から公立中学校でも導入が急拡大する制服選択制。背景にはLGBTQなど性的マイノリティーの生徒への配慮や、ズボン着用を求める女生徒の声があった。制服デザインを一新し、男女の区別を無くした学校もある。

浦添市立仲西中学校が2020年度から導入する男女共通の制服=3月31日、浦添市屋富祖

 ズボン着用が認められた時、飛び上がるほどうれしかった―。この春、沖縄本島中部の中学校を卒業した佳奈さん(仮名)。「体は女性、心はほぼ男性」と思っていて、学校でスカートをはくのがたまらなく嫌だった。卒業目前に制服選択制が実現し、「自分らしく生きられる人が増えればうれしい」と喜んだ。

 中学校に上がる時、一つだけ嫌なことがあった。私服だった小学校と違って、制服がある。それも女子はスカートと決まっていた。違和感があったが、仕方なくスカートをはいた。

 性別に関係なく好きな制服が着られる―。そんな報道を見て、「いいな」と憧れた。2年の時、ズボンをはきたいと先生に相談した。当時はかなわなかったが、3年の3学期、「制服選択の第1号になってみない?」と聞かれた。「お願いします」と即答した。

 お下がりのズボンは、サイズもぴったりだった。クラスメートも「ズボンの方がいいよ」と認めてくれた。スカートは帰宅後すぐ脱いでいたが、ズボンは脱ぎたくなかった。「土日もズボンをはいて学校に行きたかった。スカートじゃない自分がうれしかった」

 進学先の高校でも制服選択が認められている。佳奈さんは「制服に違和感があっても、反応が怖くて自分では言えない人もいた。これからどんどん個性が認められる世界になると思う」と期待した。


学校側「居心地悪さ取り除く」

 「制服が原因で学校の居心地が悪くなっているなら、それを取り除くのが大人の役割」。浦添市立仲西中の神谷加代子校長が強調する。同校は19年1月から教職員とPTAが協議を重ね、男女の区別のない制服の導入を決めた。男子は学ラン、女子はセーラーだったが、20年度の入学生からブレザーに一新する。

 神谷校長が過去に勤務した学校では、心の性と体の性が違い、制服で悩む生徒がいたという。神谷校長は「一人一人の個性を尊重し、互いに高め合う学校を目指したい」と話した。

 同市では神森中も20年度から制服選択制を導入予定で、既に校則を改正した。同校は19年度、LGBTQに関する一斉授業を全クラスで行った。全国的にも珍しい取り組みで、制服選択制に関するアンケートも実施。生徒、保護者共に8割以上が「賛成」と答え、「反対」はいずれも2%にとどまったという。

 制服選択に際し、同校では事前相談などは必要ない。一斉授業を計画した上原真美教諭は「制服選択制が『自分らしく生きていいよ』というメッセージになれば」と話した。

 一方、制服選択制に関する県教委の19年度調査で、「(20年度の導入)予定なし」と答えた中学校が全体の6割を超える94校に上った。本紙の取材に「(LGBTQの)当該生徒がいないから」「相談があれば対応する」と話す学校もあったが、レインボーハートプロジェクトokinawaの竹内清文代表は「先生や親に相談できない子が大半で、『いない』ではなく『言えない』が実態だ。全ての学校で、事前相談不要の制服選択制を実現してほしい」と述べた。

(真崎裕史)