医療・先端技術を核に 普天間、牧港、軍港返還跡 有識者懇第1次案


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第1次とりまとめ内容を報告する、基地跡地の未来に関する懇談会の角南篤座長=10日、内閣府

 【東京】今後返還が見込まれる在日米軍施設・区域の跡地利用に向け、核となる施設や機能の可能性を検討してきた内閣府の有識者会議「基地跡地の未来に関する懇談会」は10日、第1次取りまとめ内容を公表した。核となる施設・機能として沖縄長寿健康医療都市(メディコン・ヒル)と、沖縄先端実験都市(シリコン・リーフ)を提案した。懇談会の角南篤座長は私見として「次の振興計画に向けた議論で参考にしてほしい」と述べた。次期沖縄振興計画の議論に影響を与えそうだ。

 提案は米軍普天間飛行場、牧港補給地区、那覇軍港の3施設の跡利用を想定して策定。個別の検討はせず、今後、地元の自治体や地主会による跡利用計画策定に向けた議論の中で参考にしてもらうのが狙い。

 メディコン・ヒル構想は創薬・健康産業の集積を目指す。琉球大が西普天間住宅地区跡地で構築を進める沖縄バイオインフォメーションバンクを発展させ、ゲノムや血液などの生態情報や、診療記録、投薬履歴、健康情報などのデータを蓄積。国内外の先進的企業が集積する拠点を整備し、入居企業には研究を進める上で必要な蓄積データが利用できる環境を整えることで新産業の創出を促す。

 住民からもウエアラブル端末や体組成計などのセンサーを通じて日々の健康情報や運動データを蓄積、解析した上でアプリを通じて住民に食事や運動指導を行う―といった循環を生み出す。住めば健康になる健康都市を目指し、長寿県の復活にもつなげる。

 シリコン・リーフは自動運転自動車など、次世代技術の実証ができる街づくりを目指す。産学官の企画、研究、交流拠点を設け、新技術を用いて社会課題の解決を進める。旅先で長期滞在中に仕事もこなすワーケーションを促すなど新たな働き方の実践も取り入れる。AIなどの高度な技術を使える人材を発掘・育成する拠点とする。

 跡地の都市空間全体を包み込む施設・機能として、昔ながらの松並木や伝統を生かした街並みを復活させるなど「沖縄を象徴する景観」の形成や「国際交流拠点」、リゾート、エンタメ、スポーツを含む「職・住・遊が近接した居住空間の実現」が求められるとした。