感染者情報どこまで公表すべき? 職業や施設名の「非公表」に不安の声も


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沖縄県庁

 「沖縄県の発表は、感染者の数だけで、具体的なことは何も分からない。県は職業や施設を公にしないのか」。新型コロナウイルス感染者の公表の在り方を巡り、こんな声がりゅうちゃんねる取材班に寄せられた。これまで、糸満市の病院に勤める看護師や名護市の高齢者施設職員の感染が明らかになったが、県は職業や施設名を公表しなかった。県民の感染拡大への不安が高まる中、患者や感染経路の情報をどこまで公表すべきなのか。自治体も頭を抱えている。

 「なぜ情報を公表しないのか」「通っている施設で接触している可能性があるのに確かめようがない」。県民からは新型コロナウイルスの情報が公にならないことを不安視する声が本紙にあった。職業や施設など感染者に関する情報の開示をめぐり、各市町村や事業者の判断基準は分かれている。

 県独自の感染症発症時の公表基準として、県保健医療部地域保健課は「個人が特定される名前や職業、国籍などは公表しない」と説明した。一方で「新型コロナについては、その基準に準じられていない」とも明かし、感染拡大防止のため公表する事例もあるという。つまりはケース・バイ・ケースともいえ、ダイヤモンド・プリンセスの乗客が利用したタクシー運転手や県職員の感染などは「公表の必要性を重視」したという。

 感染症法は、まん延を予防するため必要な情報を積極的に公表するよう義務付けるが、個人情報の保護に留意するようにも求めている。自治体はその判断の「難しさ」に直面する。県担当者は「こちらとしても情報は出したいが、本人の理解が得られないと難しい」と吐露した。個人が特定されることで風評被害や誹謗(ひぼう)中傷につながる可能性は否定できないとする。

 独自の判断で公表した企業はどうか。ホテルロイヤルオリオンを持つオリオンビール広報は感染拡大を防止するため施設名を公表した。同社は「(その判断は)間違っていない。社として透明性を持った公表を掲げている。県民を守るという視点で全力でやる覚悟だ」と強調した。個人を守りながら感染拡大をいかに防ぐか。適切な判断が求められている。
 (阪口彩子)