縮む清明祭、重箱売り上げ3分の1 天ぷら店絶句「かき入れ時なのに」


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重箱に料理を詰める従業員たち=11日、沖縄市登川(上間フードアンドライフ提供)

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、親戚が集まってお墓の前で重箱やオードブルを囲む年中行事の清明祭(シーミー)も今年は自粛が求められ、様子が一変している。小売店にとって「一番のかき入れ時」だが、清明祭の取りやめや規模縮小で関連商材の売り上げが激減している。重箱や餅などの売り上げは例年の3分の1程度に落ち込んでおり、7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が発令されたことで沖縄でも清明祭の取りやめの動きが強まっているという。

 「東京に緊急事態宣言が出された頃からキャンセルが相次いでいる」。上間天ぷら弁当店(沖縄市)の上間喜壽社長は話す。沖縄の伝統行事や法事に必要な重箱料理などをインターネットで注文できる手軽さが評判となり、売り上げを伸ばしてきた。

 しかし、今年は違う。清明祭の注文は前年比7割減と落ち込んでいる。中国で感染が広がった頃から、自社にも影響が及ぶことを予想し備えてきたが「ここまでとは。想定外だった」と絶句する。「約1カ月の清明は一番のかき入れ時だが、この状態だ。このままだと人員削減に入らないといけない」と厳しい表情を浮かべる。

 オードブルや重箱を取り扱うスーパー各社も、出足の鈍さを感じている。サンエーは「売り上げ、予約とも昨年より減少している」と回答。イオン琉球の広報担当者も「予約を受けている時期だが、大人数の集まりは自粛していると感じる」と話した。

 リウボウストアはこれまで清明祭の重箱やオードブルは予約キャンセルが出なかったが、今年は店舗によってキャンセルが発生している。例年の計画で販売すると食品ロスが出る恐れがあることから、清明祭の開催状況や新型コロナの状況を注視しながら商品の製造計画を調整している。

 清明祭の縮小は街の菓子店も直撃している。那覇市内の餅屋は「いつもなら今が一番忙しい時期だけど…」と肩を落とす。清明のピークは4月の第2週と3週というが、第2週の週末直前でも注文は例年の3分の1しかなった。「この事態だから仕方ないが、打撃は大きい」と語る。

 お供え用の切り花「シーミー花」も、新型コロナの影響を受けている。県花卉(かき)卸売市場によると、清明祭の規模縮小、自粛の要望が報道された影響もあり、県内スーパーでは売り上げが例年の半分になったという。競りに訪れる仕入れ業社も通常の50人から20人ほどに減少した。

 同市場の兼島學社長は「自粛で買い控えをする傾向にある。規模縮小しても家庭でシーミー花を飾ってほしい」と呼び掛けた。

(玉城江梨子、石井恵理菜)