あいまいな県の営業自粛対策 事業者ら戸惑い「はっきり示して」


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 沖縄を含む全都道府県が緊急事態宣言の対象地域に指定され、18日から最初の週末を迎える。急きょ発令された対象地域の拡大に戸惑う県は、17日までに営業自粛を求める業種の指定や休業中の補償など具体的な対策を示すことはできなかった。那覇市内の飲食店主は「営業を自粛すべきなのか、はっきりと示してほしい」と語り、小規模事業所や個人事業主らには不安が募る。

新型コロナウイルス感染症拡大による客足減で、タクシー業界の窮状を訴える個人タクシーの運転手=17日、那覇市内

 一方で、小売り大手などは生活必需品を取り扱う一部店舗を除いて大型ショッピングセンターの休業を決めるなど、県の方針にかかわらず、臨時休業や営業時間短縮の対応に踏み切っている。18日から専門店が一斉に休館するイオンモール沖縄ライカムを訪れていた小嶺志歩さん(37)=うるま市=は「いつも利用しているので寂しいが、感染を広げないために仕方がない。早く終息して、元通りの生活になってほしい」と語った。

■営業続行か休業か

 緊急事態宣言が発令された東京都は10日に、不要不急の外出を減らすため都として休業を要請する店舗と、生活のライフラインとして業務継続ができる店舗を業種ごとに振り分けた。休業要請に応じる企業に対しては協力金として都が金銭を支給する。

 玉城デニー知事は17日の記者会見で「予算規模や業種をしっかり議論しないといけない」と述べ、休業要請を巡る具体的な対応について庁内の取りまとめを急いでいる最中であることに理解を求めた。

 本島中部で飲食店を営む50代男性は、仮に県から飲食店の休業要請が出た場合でも、営業を続ける構えだ。客が減って売り上げは10分の1程度に落ち込んでいるが、従業員の生活も考えると店を閉めることがはばかられるという。

 東京都は居酒屋を含む飲食店については業務継続業種とした上で、デリバリーやテークアウト以外の営業時間を「午前5時~午後8時」、酒類の提供は「午後7時まで」としている。男性は感染症対策を取った上で、緊急事態宣言の発令後も東京都の示した時間で営業をしていく考えだ。

 男性は「補償がはっきりしない中で『休める』と言える状況ではない。開けようが、閉めようがすでにダメージは大きいので、感染症対策をして営業を続けていきたい」と語った。

■苦境の業界

 「街が暗い。ほら、すれ違う車も、全部空だ」

 17日夜、那覇市の国際通りで車を走らせながら、50代の個人タクシー運転手は嘆いた。新型コロナの影響で客足は途絶え、1日の売り上げは2千~3千円程度。空港で客待ちをしても、6時間待って一人も乗客がいない日もある。

 観光客の激減に加え、4月に入って歓楽街で乗車する地元客も消えた。客の減少でタクシーが供給過剰となる中で、法人タクシーでつくる県ハイヤー・タクシー協会(東江一成会長)は、協会としての稼働台数を3600台から1800台まで半分に減車する方向で検討を進めている。

 一層の外出自粛要請が見込まれる緊急事態宣言の発令で、法人、個人を問わず業界の苦境はさらに深まる。タクシー運転手は「自宅の家賃などの支払いができない運転手もいる。現金での支援が必要な状況だ」と窮状を訴えた。

(池田哲平)