琉球花火の歴史感じて 尚家文書、翻訳し書籍化


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 約150年前の琉球にあった色鮮やかな花火―。琉球王国時代、中国の冊封使を歓待する首里城の宴で当時、国内や中国にもない琉球独自の「からくり仕掛け花火」が披露されていた。この花火の詳細を記した1866年当時の担当者の記録を翻訳した「『火花方(ひばなほう)日記』の研究」(榕樹書林、3960円)がこのほど榕樹書林から発刊された。「日記」は2006年6月に国宝に指定された尚家文書の中の一冊。尚家文書の一部が書籍として刊行されるのは初めて。

 琉球王国の花火の最高傑作とされる「からくり仕掛け花火」は「火花方日記」だけに記された。沖縄県立芸大の麻生伸一准教授が主導し18年から研究や翻訳作業が始まった。19年10月には国立劇場おきなわ組踊上演300周年記念野外研究公演で、日記に記された「花火」の一つ、「掛床」が復元され披露された。日記には「掛床」を含めカラーの絵図で五つの花火が紹介されている。

 「掛床」は高さ3メートル40センチ。点火すると「松竹梅」の掛け軸が垂れ下がったり火車が回転したり仕掛けが次々と動き出す。

 麻生氏と共に「研究」の編集に携わった国立劇場おきなわ運営財団の茂木仁史調査養成課長によると、日記からは担当者が花火の仕掛けに情熱とプライドを懸ける姿がうかがえるという。茂木氏は「将来的には毎年花火を一つずつ復元したい。本を読むことで現在は幻となった琉球の花火を多くの人に知ってほしい」とアピールした。

榕樹書林から発行された『琉球国王尚家文書「火花方日記」の研究』と編者の茂木仁史さん=17日午前、琉球新報社
国立劇場おきなわ組踊上演300周年記念野外研究公演で披露された約150年前の仕掛けからくり花火「掛床」=2019年10月、浦添市内