従来型の選挙運動、迫られる変革 コロナで地域回りは中止、集会も困難


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県議会で4議席を有する公明党が新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に県議選の候補者を取り下げる異例の対応に出た。支持母体である創価学会員など候補者の政治活動や選挙運動を支える支持者や県民の「命を守る」(県本幹部)ことを最優先し“公認取り消し”という苦渋の決断を下した。

 公明の選挙戦は学会員を中心とする徹底した地域回りが柱となるが、新型コロナが流行して以降、地域回りを中止した。都内にある学会本部からは都道府県支部に対して会館の使用を中止するよう指示が降り、選挙関連の集会を行うことも困難となり、「あらゆる手段が封じられた状態」(県本幹部)に陥った。

 県内で感染者が急増した3月下旬以降、公明党は県議選の延期を主張してきた。4月21日には県本の糸洲朝則沖縄方面本部長代行が玉城デニー知事に対して県議選の延期を直談判したほか、県内各政党にも同調するよう呼び掛けた。並行して、党本部も連立を組む自民党や官邸に対して県議選を含めた地方選挙の延期を提言していた。

 党本部関係者は「選挙戦で死者が出たら悲劇だ。支援企業や支持者からは、この時期に選挙をやるべきではないと厳しい意見が多く寄せられた」と解説する。

 だが、公明の思惑とは裏腹に延期論を支持する政党や政治家は一部にとどまった。共産党のように選挙を期日通り実施すべきだと主張する政党もあり、県内政党が“延期論”でまとまることはなく、公明の交渉は不発に終わった。

 選挙の延期は厳しいとの見方が強まる中、県本は代替案として人選の練り直し作業に着手した。県本幹部によると、当初、公認候補4人全員が出馬を辞退する案も浮上したが、県政内の影響力低下を懸念し、最終的に県本代表と幹事長だけ出馬すべきだとの意見で一致した。県本幹部は「議席は4年後に取り戻せるが命は取り戻せない。それがすべてだ」と語った。

 県本幹部は「通常の選挙運動を行えば4人全員が勝てる。しかし、通常の選挙戦にならないのが今回の新型コロナだ」と語った。
 (吉田健一)