【記者解説】ジュゴン訴訟敗訴 連邦高裁、米政府の「広い裁量」認める


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<解説>
 米国防総省を相手に2003年から続く米ジュゴン訴訟は控訴審で、名護市辺野古の新基地建設中止を求める原告が敗訴した。判決は基地建設がジュゴンの生態に「影響を与えない」とした国防総省の判断について、その検討過程に足りない部分はあったとして原告の主張を一部認めた。だが「影響を与える」というデータもないとし、国防総省の判断は「非合理ではない」とした。米国外での行為にも適用される米文化財保護法(NHPA)が米政府に求める文化財保護の「考慮」の在り方について、米政府自身に広い裁量を認めた形だ。
 原告は米政府による「考慮」の内容について、例えば県を含む地元関係者との協議が不十分だとし、手続きの“欠陥”を主張した。だが判決は、法は協議の対象を具体的に指定するものではないと否定。また、専門家の発言内容を参考にする「間接」の形式でも協議は足りるとした。米政府による「考慮」の具体的な中身には深く立ち入らず、形式的に整っていれば違法とはしない立場を取った。
 日本政府が新基地建設を進める中、原告らは海を越えた米国の司法に働き掛けるアプローチで建設阻止を試みてきたが、控訴審判決ではその試みは失敗した。
 一方、この訴訟は14年までの行政文書を審査の対象とし、実際の新基地建設工事が始まった後にジュゴンが周辺海域から姿を消した状況などは反映されていない。そのため原告は上告の選択肢の他に、「実際の影響」を踏まえた別の訴訟を起こすことも検討する方針だ。
 (島袋良太)