[日曜の風]「まずは検査」沖縄発信が全国に


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 新型コロナウイルス感染症の流行で、沖縄のゴールデンウイークも観光客でにぎわういつもの光景が消えていただろう。

 しかし今、全国の医療関係者が「沖縄の底力」に注目している。群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春氏(浦添市)が、東京の医師らとともに「コロナの検査をもっと増やすべき」と早くから主張し、ようやくそれが実現されつつあるのだ。

 この新しい感染症には発熱や咳などいくつかの典型的な症状はあるが、決め手はPCR検査というものだ。インフルエンザを疑って鼻に綿棒を入れる検査を受けたことがある人も多いと思うが、やり方や原理はそれと同じだ。

 ただ、コロナに関してはそのPCR検査は基本的に保健所主導で行われてきて、患者さんが体調不良を訴え、医者が「コロナかもしれない」と考えたとしても、すぐに検査をすることができなかったのだ。そのため、検査を受けられる人の数は諸外国に比べて極端に少なく、本当の感染者数はいまだにわかっていない。検査を受けられないうちに症状が悪くなり、自宅で亡くなる人も報告されている。

 そういう状況に対して、全国の医師会や一部のクリニックが独自で検査を行える体制を整えつつあるが、その先陣を切って沖縄から声を上げたのが徳田医師だったのだ。

 私は最近、徳田医師とオンラインで連続対談を行い、それをネットで配信した。徳田医師はその中で何度も、「患者さんのためにも、感染の状況を正しく知って対策を立てるためにも、まずは検査が必要」と繰り返した。臨床医学の父といわれるオスラー博士の「謙遜の徳」を座右の銘とする徳田医師の粘り強い訴えが、日本のコロナ医療を変えようとしている。沖縄の人たちは誇りを感じてほしいと思う。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)