検証・復帰48年 「自立型経済」進めるが…基地が障害、貧困率は全国の倍


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 沖縄が日本に復帰して15日で48年となった。米国統治下の27年間、県民は圧政に苦しみ、復帰によって「基地のない平和な沖縄」の実現を望んだが、過重な米軍基地負担は今も続いている。一方、沖縄振興計画で「本土との格差是正」を掲げ、社会資本整備が進められ、2002年からの第4次計画以降は「民間主導の自立型経済の構築」を目指してきた。復帰48年を経て、県民の暮らしはどう変わったか。子どもの貧困や雇用などの課題が山積する中、観光を基幹産業とする県経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルスの世界的流行は沖縄の針路にどう影響するか。課題を検証する。

【基地問題】米軍と自衛隊一体化

 沖縄が日本に復帰して48年が経過したが、日本にある米軍専用施設の7割が沖縄に集中している。米軍基地に由来する事件・事故、環境汚染が続いてきた。自衛隊も増強され、沖縄は自衛隊と米軍が一体化を進める拠点の一つとなっている。一方で米軍関係収入が県民所得に占める割合は大幅に減少し基地返還跡地で経済発展が進むなど、基地が経済の阻害要因であることが明確になった。

 日本復帰の1972年、米軍専用施設の面積の割合は沖縄58・7%、県外41・3%だった。基地返還が県外と比べて進まず、国土面積の0・6%にすぎない沖縄に米軍専用施設の70・3%が集まっている。自衛隊施設は2018年現在で47施設713・6ヘクタールと復帰時の約4・3倍だ。

 現行の米軍基地返還計画の多くが県内移設の条件付きで、返還が順調に進まない原因となっている。特に米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について19年の県民投票で反対票が約7割を占めた。それでも政府は移設工事を強行し続けており、県民は反発を強めている。

【産業と雇用】県民所得 全国の7割

 復帰以降、1人当たりの県民所得は全国最下位にとどまり、2016年度は全国の7割程度だった。沖縄総合事務局の19年度労働生産性調査報告書は、県民所得が低い要因に労働生産性の低さを指摘する。

 県内の労働生産性は全国平均の7割程度で、その理由にサービス業が産業構造の8割以上を占めること、労働生産性の高い製造業が少ないことを挙げた。

 17年度の離職率は2・8%で全国で2番目に高く、非正規雇用者の割合が43・1%で全国平均を4・9ポイント上回る。総合事務局はこれらも労働生産性の低迷を招く要因とし、人的資本への投資の必要性を挙げた。

 01年には完全失業率が8・4%まで悪化したが、近年は好調な観光がけん引し、19年度は2・8%に改善。人手不足が新たな課題となった。一方、19年度の有効求人倍率は1・16倍で前年度を0・02ポイント下回った。沖縄労働局は新型コロナウイルス感染拡大による影響と分析し、今後の雇用情勢の悪化を懸念している。

【暮らし・子の貧困】進学率、全国で最低

 観光産業の発展や失業率改善の一方で、近年大きな社会課題とされているのが子どもの貧困だ。沖縄の子どもの相対的貧困率(2015年度)は29・9%で、全国平均の約2・2倍。子どもの貧困率の高さは、低賃金や非正規雇用の割合の高さ、ひとり親家庭の出現率の高さなどが要因と考えられている。

 県の18年度ひとり親世帯実態調査によると、母子世帯の出現率は4・88%、父子世帯0・74%となり、全国の約2倍の状況だ。県が16年に発表した調査では、経済的な理由で過去1年間、必要な食料を買えないことがあった県内の子育て世帯はひとり親世帯で43%、両親がいる世帯でも25%に上った。

 進学率は高校が97・4%、大学が39・7%と年々向上しているものの、依然として全国で最も低い。

 親の就労環境の改善が子どもの貧困の解消に不可欠とされるが、新型コロナウイルスの感染拡大による経済・雇用環境の悪化は困窮世帯により一層大きな影響を与えている。