高校球児、夢捨てず 県大会「ある」と信じ黙々練習


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夏の甲子園へ行くことを目標に、毎日の素振りを欠かさない宮古の笠原秀太主将(本人提供)

 新型コロナウイルスの影響で、休校期間は1カ月を越えた。全国高校総体や全国中学校体育大会が中止に追い込まれ、夏の甲子園、全国高校野球選手権も中止の方向で検討されている。県内の高校球児たちは何を思い、どのような日々を過ごしているのか。球児たちの今を追った。

 ■早くプレーしたい

 冬の体重増加や筋力増トレーニングを重ね、春季大会で2年連続4強入りした沖縄工。春は継投策が奏功したが、夏に向け投手陣のさらなる成長を目指している。

 休校中も生活習慣の徹底などを呼び掛けてきた知名淳監督は甲子園が中止の方向であることについて「休みの間も個人練習をしてきた選手にこれ以上頑張れとは軽々しく言えない」と戸惑いを隠せない。

「競技人生最後の1年」と、夏を待ち練習に励む沖縄工の國吉涼介主将(本人提供)

 「甲子園を夢見て頑張ってきたので悔しい」とつぶやいたのは、春に出塁率6割超で活躍した國吉涼介主将。卒業後は就職希望で、最後の夏に向け、いつチーム練習が再開しても動けるよう、早朝ランニングや少人数でのノック、キャッチボールなど“3密”を避けた練習を続けている。

 両親らのサポートを思い「甲子園での活躍を期待していたはず。せめて県大会だけでもやらせてほしい」と気丈に語った。

 春は5年ぶりの4強入りで、地元を沸かせた宮古。「こんなに打線がつながるのか、と自信が付いた」と振り返るのは笠原秀太主将。県内のコロナの感染者数が落ち着いてきていることに「これなら県大会はできるかも、と少し希望が出てきています」。毎日の素振りにも熱が入る。感染防止から、練習はもっぱら1人だ。「1人は退屈。早くみんなと一緒に野球がしたい」。

 ■支える人のため

 美里工では神谷嘉宗監督と選手が交換する「野球ノート」を無料通話アプリLINEで代用して続けている。「モチベーションを落とさず、頑張りましょう」「夏はすぐそこです」と監督が声を掛け続け、各自の練習の動画や写真も積極的に共有してきた。

休校中はフォーム修正に取り組む、美里工の與古田美月(本人提供)

 メンバー同士の心が離れないよう腐心してきた神谷監督は甲子園の中止検討について「高校生にとって夏の大会が一番大事だからショックです。正式決定までは望みを捨てない。県大会もきっとあると信じている」と自らに言い聞かせるように語った。

 春季大会でエースナンバーを背負った左腕・與古田美月は、休校中の約1カ月間を「春の大会での課題や自分を見つめ直す良い時間になっている」と、投球フォームの修正に注力してきた。

 選手権については「あると信じて練習するだけ」と2010年に興南が春夏連覇した際の映像などを見て気持ちを奮い立たせる。

 野球は高校までと決めている。これまで支えてくれた母や與古田の試合を見るのが“生きがい”だという祖父のためにもどうしても夏の大会でプレーがしたい。開催を信じて個人練習に汗を流す。「神谷監督を甲子園に連れて行きたい。大声援の中で、母さんやじいちゃんに恩返ししたい」。

 それぞれの思いを胸に、再びグラウンドでプレーできる日を待ちわびる。
 (上江洲真梨子)