基地汚染 次代のため水源の安全徹底を<6・7県議選 1票の現場から>3


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収穫したレンコンを手に、政治に望むことを語る宮城優さん=5月4日、宜野湾市大山

 宜野湾市大山で田芋とレンコンを育てる宮城優さん(55)は、毎朝午前6時ごろから作業を始める。家業の田芋栽培を継いだ約20年前、朝の静けさの中である変化に気付いた。「カエルの鳴き声が聞こえない。フナの姿も見えなくなった」。湧き水「アラナキガー」の豊富な水源に恵まれた大山一帯。その一角にある先祖代々受け継いできた畑は、幼い頃は遊び場だった。かつては歩くたびにカエルが飛び跳ね、周辺の住宅地まで鳴き声が響いていた。「自然環境に異変が起きている」と不安がよぎった。

 幼い頃の風景は数十年の間に様変わりした。午前8時ごろ、カエルの鳴き声の代わりに聞こえてくるのは、米軍普天間飛行場内から流れてくる米国国歌だ。「基地が近くにあって、何らかの害がない方がおかしいくらいだ」と、飛行場の方角を見詰める。県内で米軍由来の有害物質による環境汚染が発覚するたびに「大山も影響があるのでは」と不信感を抱いていた。

 嫌な予感は的中した。2016年、国際的に製造や使用が禁止され、発がん性のリスクが指摘される有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)が、普天間飛行場周辺の水源から高濃度で検出された。

 「土壌の微生物で育てるのがモットー」という宮城さんは農薬を使わない自然農法にこだわり、丹精を込めて育てた作物は、自然農法に理解を示す八百屋や飲食店へ直接納品している。しかし、周辺で水質汚染が発覚した後は「有毒なものが含まれるかもしれない土で育てていいのか」と農業をやめることも考えた。

 19年の京都大学の調査では、有機フッ素化合物は作物には蓄積されにくいとされた。それでも、水質汚染が報道されるたびに風評被害に悩まされた。高濃度の数値が検出されて以降も、米軍は関係性を認めずに基地内の立ち入り調査を拒んできた。「止めどなく流れてくる有害物質は自分の手では防ぎようがない」

 今年4月10日、普天間飛行場から大量の泡消火剤が流出した。事故を受け、米軍は国や県、市による基地内調査をようやく受け入れたが、宮城さんは「遅すぎる。市民はずっと置き去りにされてきた」と憤る。「農家がどんなに不安に感じたとしても、行政は『使えない土地だ』とは言わないだろう」と行政側の対応を注視している。「議員には市民の代表として、水源の安全を徹底するよう行政に働き掛けてほしい。畑を子や孫の代まで引き継ぎたい」。収穫したレンコンを握る手に力が入った。
 (下地美夏子)