[日曜の風・香山リカ氏]新基地工事再開 怒る権利がある


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 アメリカのミネソタ州で起きた白人警官による黒人男性暴行死事件で、世界で抗議の集会やデモが行われている。沖縄市でも12日、約300人(主催者発表)が集まって集会を開き、人種差別解消への思いを訴えるリレートークなどが行われたという。参加者によるととても平和的な雰囲気だったというが、アメリカやイギリスでは集まった人が怒声を上げる場面もある。

 そんな中、アメリカの子ども向け人気番組『セサミストリート』のキャラクターたちが、放送局CNNの動画に登場した。人種差別やそれへの抗議について、子どもたちにわかりやすく解説するためだ。

 人気キャラのエルモが集会の様子を見て驚き、父親に「あれは何?」と質問する。すると父親は、「抗議するために集まっているんだよ。他の人に問題があることを伝えるためだ。お父さんもこれから参加するつもり」と言って、「愛、正しさ、平和」と書かれたプラカードを見せる。

 外からは大きな声も聞こえてきているようで、エルモはさらに「どうして怒ってるの?」と尋ねる。父親の答えはこうだ。

 「みんな、悲しんでいるよ。そして怒っている。怒る権利があるからだ」

 私はハッとした。以前、東村高江でヘリパッド新設の抗議に参加したとき、友人に「気持ちはわかるけど、みんなで大声を上げるなんて恥ずかしくないの?」と言われたことがあったからだ。そのとき私は「そんなことないよ」とだけ答えて、それ以上の説明ができずにいた。あのとき、私もエルモの父親のようにはっきり、「沖縄の人たちには怒る権利がある」と言えばよかった。

 日本では、どんなときでも「大声で怒るのは良くないこと」という空気がある。怒りたくても、笑いながら黙ってしまうこともある。でも、それは間違いだ。怒る権利があるときは怒ってよい。

 名護市辺野古の新基地建設工事が民意に反して再開されたニュースを見て、私も東京から怒っている。これからも必要なときはどんどん怒っていきたい。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)