グッドデザイン賞審査委員長に就任 安次富隆さん(60)デザインとは「手段を考え実行に移すこと」


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 2020年度グッドデザイン賞の審査委員長に就任した。これまでテレビやスピーカー、食器、腰掛けなど形ある物のデザインを数多く手掛けてきた。モノ以外に地場産業の振興にも携わる。

 デザインとは、製品やグラフィックの形などにとどまらず「目的を達成するための手段を考え実行に移すこと」と広く捉えてきた。それで活動の幅も広い。

 首里高時代、スポーツ大会の旗に先生の似顔絵を描いて、「うまい」と評されたのがデザインの目覚めだった。進学では物理や工学など専門分野を絞りたくなかった。「デザイン」だと工学的でもあり、哲学や歴史のほか数学的美的感覚も必要になる。「漠然と専門分野を決めなくていいのがいい」と美術系大学を目指して上京した。

 6年務めたソニーを辞めて独立。周りからは「無謀だ」と引き留められた。テレビやビデオ機器をデザインしてきて「とても面白かった。でも家具や文具などいろいろやりたくて飛び出した」。

 応募した「平和の礎」のデザインコンペでは、宇宙を表現して世界中の自然石をうずまき状に配したデザインが2位の優秀賞に選ばれた。地域の産業の在り方もデザインする。地元の要請で携わった富山県高岡市の地場産業、鋳物と漆の振興は今年で21年目。直接新製品を開発することはせず「生産者自身をデザイナーにすることを目標に掲げ」、生産だけでなく、流通、販売までできる人を育てた。

 学生時代から「極小のエネルギーで最大限の効果」を目指してきた。尊敬する絵本作家のディック・ブルーナさんは、たった一つの絵本で世界中の人々を喜ばせている。「デザインも言語不要のコミュニケーションツール。見て、使った瞬間人に喜びを与えられる」。そんなデザインを追い求めている。

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 安次富 隆(あしとみ・たかし) プロダクトデザイナー。1959年10月、那覇市生まれ。首里中、首里高、多摩美術大卒。ソニーのデザインセンター入社。91年ザートデザインを設立し独立。グッドデザイン賞など受賞作も多数。多摩美大で指導もし2008年から教授。東京都在住。