「こんなデータ初めて」過去最悪6月短観 「人の動き頼み」沖縄経済の弱み直撃


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<解説>

 日銀那覇支店が1日に発表した4~6月期の県内企業短期経済観測調査(短観)によると、業況判断指数(DI)が過去最悪となった。新型コロナウイルス感染症の影響が生じる以前と比較すると62ポイント下落し、全国で最も高いDI値から全国平均を下回る値となった。同支店の桑原康二支店長は「つるべ落としのような下落。このような統計データをみるのは初めて」と表現。非製造業が主体で「人の動き」ありきの県経済構造の脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した形となった。

日銀那覇支店

 今回の調査で表面化したのは雇用など将来の企業活動に直結する指標の悪化だ。雇用は「人員過剰」の方向へ大幅に変化したほか、新卒採用計画も20年度、21年度計画で前年度比減少するなど、企業の採用スタンスは一気に慎重化している。

 桑原支店長は「雇用と所得の前向きな好循環が一時的に失われている」との見解を示す。雇用が悪化すれば県民の所得が減少し、消費の低迷を招く悪循環につながりかねない。

 雇用は景気変動にやや遅れて変化する「遅行指標」とされている。いったん悪化した雇用が以前の水準に戻るにも時間がかかるとみられる。

 設備投資も業況の悪化で機械更新、改装の先送りなどの事例があるという。

 需要の消失で利益の確保が難しくなり、雇用や設備投資に消極的な企業は今後も増加すると考えられる。一方、観光客向け中心の運営を見直し、県民向けの店舗の増設を検討する飲食店や、ロボットを活用して感染対策と省人化を図るなど、アフターコロナを見据えて新規投資を検討する企業も出てきている。

 同支店は「感染症の第1波の下では、景気は底を打って回復に向かい始める」としている。

 県経済の回復は感染症の第2波、第3波を避けることと同時に、各企業が苦境を耐えしのぎながら収束後を見据えた成長戦略を描けるかどうかで大きく左右される。
 (池田哲平)