<深掘り>菅氏苦言は「あたらない」のか 沖縄県は「意外」、西村担当相も「連絡取っている」


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県の立場を表明する玉城デニー知事=3日午後、県庁

 新型コロナウイルスの軽症者・無症状者を受け入れる宿泊施設の確保を巡り、菅義偉官房長官が県の進め方に苦言を呈したが、県は感染の急拡大で遅れが生じたものの、計画に沿って準備を進めてきたとの認識だ。そもそも感染拡大を食い止めようとする中で「Go To キャンペーン」で人の往来を促す政府の手法が一貫性に欠けるとの指摘もある。
 菅氏の批判に対し、玉城デニー知事は「沖縄も大変だが頑張ってくださいという励ましを頂きながら(国と調整の上で宿泊施設確保の準備を)進めてきた。国とやりとりする中できつい要求などはなかった」とかわした。
 菅氏は7月にも、新型コロナの感染拡大が続く東京都をやり玉に挙げて批判していた。背景には、新型コロナ対応で国を批判してきた小池百合子都知事への不満があるとされる。コロナ対応を巡る政府への批判を棚に上げ、都道府県に努力を求めて責任を負わせる姿勢が目立つ。
 政府の新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当相は同日の会見で玉城知事と連絡を取り合っていることを強調し「病床は確保されている」と冷静な対応を呼び掛けた。
 菅氏の発言について国と調整し宿泊施設の確保に取り組んできた県の保健医療部は「意外」(糸数公保健衛生統括監)と受け止めた。大城玲子部長は「計画通りに進めてきた」と胸を張った。ただ病床や宿泊施設の確保が感染拡大の速さに追い付いていない実情がある。その結果、患者の自宅療養を選択肢に入れざるを得なくなった。
 県は第1波に合わせて4~6月に宿泊施設を借り上げていた。だが6月8日に泊まる患者がいなくなり同10日に借り上げを解除した。国が第2波に備えて段階的に病床を増やすよう都道府県に通知したのはその後だった。県は厚生労働省の通知を受け同省の示す算出方法に基づき、最大療養者を県内で425人と推計した。それに基づき医療機関200床、ホテル225室以上を確保できるよう準備を進めている。8月上旬を予定していた那覇市のホテル利用を前倒しにして7月末に開始した。4日にも別の那覇市のホテルを借り上げ、別の地域にも順次広げていく。
 糸数統括監は「7月に入り(多数の)患者が発生し、時間が間に合わないところはあった」と認めつつ「国が示した数字に基づいて医療機関と調整しながら進めてきた。(菅氏の発言は)意外な気がした」と語る。政府の「Go To キャンペーン」を念頭に「人の往来を全く制限しないままだと、沖縄は影響を非常に受けやすい地域だ。県独自で外出自粛などしているが、(人の往来が)急速な感染拡大につながったことについて国の方でも考えてほしい」と苦言を呈した。 (明真南斗、知念征尚)